パナソニックのEV用円筒形バッテリー「4680」がいま改めて注目を浴びる理由
日の丸EVバッテリーが業界勢力図を書き替えるか
4680規格の円筒形バッテリーセルの自社開発/生産計画をいち早く発表したのはテスラである(2020年9月「バッテリーデー」)。独自開発の4680は、エネルギー密度で5倍、出力密度で6倍の性能と発表された。充電1回あたりの航続距離が16%向上し、製造コストも10~20%削減可能としている。セルの電池セルのコスト低減に加え、車両に搭載するバッテリーパックの小型化、冷却など温度管理システムの簡素化などトータルで56%のコストダウンを狙うと発表された。 その後、テキサス州オースティン工場で一部のモデルYに先行搭載され、2023年7月半ばから同工場で生産が始まったサイバートラックに本格採用されている。去る9月14日には、累計で1億本の4680が生産されたとXの公式アカウント上で発表された。今後は、パナソニックからの供給分を積み増すことで、サイバートラックのバックオーダーの消化とともに他車種への横展開が進むだろう。 リチウムイオンバッテリーを世界に先駆けて実現した日本であるが、現在は中国/韓国勢の後塵を拝しているのはご存じのとおり。今回のパナソニックの発表は、そうした現在の市場構造を大きく変える可能性を秘めている。パナソニックが供給する4680はテスラだけでなく、日本国内でもマツダやスバルが採用に名乗りを上げており、今後発売される両社のEVに搭載されるリチウムイオンバッテリーは円筒形がデフォルトになる。 4680は競合するライバル各社でも開発が進んでいるが、パナソニックはおよそ30年にわたる円筒形リチウムイオンバッテリーの開発/生産ノウハウで他社に大きなアドバンテージをもつ。「競合他社の4680よりおよそ10%の高エネルギー密度を実現している」という自信を見せるパナソニックが、現状の業界勢力図を大きく書き替える可能性がある。