土地追われる農家、最後の夏 時代が切り捨てたものへの惜別描く「太陽と桃の歌」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
■「ありきたりな言葉じゃなくて」
新人の脚本家、藤田拓也(前原滉)が、りえ(小西桜子)と名乗る女性と出会ったことをきっかけに、ドラマデビューも周囲の信頼も失っていく。りえとは何者か。拓也の葛藤を中心に描く、ほろ苦くも優しい人間ドラマ。
拓也はかなり浅慮な男だが、「らんまん」(NHK)で注目された前原が、いやみなく見せる。三池崇史監督の「初恋」で注目された小西は、りえを愛らしくもミステリアスに演じ、作品に奥行きを与える。
酒向芳、奥野瑛太、内田慈ら共演者も手堅い。
拓也がここまでして「書く」ことにこだわる理由の説明がやや希薄か。テレビ朝日映像が手掛けた初長編映画。
20日から全国順次公開。1時間45分。(健)
■「型破りな教室」
米国との国境沿いの麻薬取引と殺人が日常化しているメキシコの街にある小学校で、2011年に起きた実話を基に描いた。
新任教師、セルヒオ・フアレス(エウヘニオ・デルベス)は既存のカリキュラムに縛られない授業を始め、落ちこぼれの子供たちは学ぶ喜びを知り、クラス全体の成績も急上昇。廃品集積場近くで暮らす女子生徒、パロマ(ジェニファー・トレホ)が数学の天才であることに気づく。
どんな教師に出会えるかで子供たちの未来も変えられることを痛感。インディペンデント映画の祭典「サンダンス映画祭」で観客賞受賞。監督はクリストファー・ザラ。メキシコ映画。
20日から全国順次公開。2時間5分。(啓)