小芝風花・安田顕主演「天使の耳 交通警察の夜」単話ものをテクニカルな手法で再構成 30年前の原作は逆に新鮮に!
推しが演じるあの役は、原作ではどんなふうに描かれてる? ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回は東野圭吾初期の名作を映像化したこのドラマだ! 【キャストを見る】小芝風花・安田顕から檀れいまで ドラマの豪華キャスト陣
■小芝風花・安田顕、主演! 「天使の耳 交通警察の夜」(NHK・2023)
昨年、NHK BS4KおよびBSプレミアムで放送された「天使の耳 交通警察の夜」(前後編)が、NHK総合の「ドラマ10」で全4回に再構成されて放送された。原作は東野圭吾の『天使の耳』(講談社文庫)。6編が収録された短編集で、1989年から91年にかけて雑誌に掲載されたものだ。うわあ、もう30年以上も前の小説なのか。 原作はいずれも交通事故をモチーフに、交通課の警察官たちが事故の裏側に迫っていく様子を描いている。東野圭吾らしいどんでん返しが仕掛けられたトリッキーな作品集であるとともに、当時の交通法規制の問題点を炙り出す社会派な物語でもあった。 原作に収録されているのは、交差点で起きた衝突事故で信号はどちらが青だったのかを盲目の少女が立証する「天使の耳」。走行中のトラックがいきなりハンドルを切って中央分離帯を乗り越えた理由を探る「分離帯」。初心者マークをつけた車が後続車に煽られて事故を起こしてしまう「危険な若葉」。当て逃げ犯から連絡を受けて謝罪されたが、そこに思わぬ企みが潜んでいた「通りゃんせ」。前の車からポイ捨てされた空き缶が後続車の同乗者に大怪我を負わせた「捨てないで」。そして交差点で起きた車とバイクの事故に意外な秘密が隠されていた「鏡の中で」の6編だ。 原作の各話は完全に独立しており、事件にあたる警察官もすべて別の人物である。けれどドラマは交通課警察官の陣内(小芝風花)と金沢(安田顕)を軸に起き、すべて彼らが担当する事故にしたのがミソ。この6編から「鏡の中で」を除く5編を組み合わせて再構成しており、一話完結ではなくそれぞれの事件が連続して起きる(時には絡んでいく)構造になっている。いやあ、これが実にテクニカルなのだ。 交通事故そのものはほぼ原作のままに展開するが、ちょっと割りを食ってしまったのが原作の「捨てないで」だ。車からのポイ捨てが大惨事につながるのも、それが意外な形で解決するのも原作と同じだが、実は原作にはある殺人事件が描かれる。そのくだりがばっさりカットされていたので、ぜひ原作で確認していただきたい。
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