横浜高、ドクターK松井攻略に秘策
あえてセオリーの逆を
ドクターK左腕攻略に自信あり。24日の神奈川県大会準々決勝(横浜スタジアム)で、今秋のドラフト会議の目玉、松井裕樹投手(3年)を擁する桐光学園と激突する名門・横浜が勝利への秘策を練っている。 仕掛け人は、どっしりとした体型がトレードマークの小倉清一郎コーチ。部長時代に松坂大輔を発掘・育成した69歳の「名伯楽」は、同時に対戦校の投手陣や打線、戦術を徹底的に分析し、盟友の渡辺元智監督に勝利の方程式を託す「名参謀」としても知られている。 桐光学園の初戦となった相洋との2回戦が行われた14日は、実は横浜の初戦でもあった。しかし、小倉コーチはチームを離れて、保土ヶ谷・神奈川新聞スタジアムのバックネット裏の最前列で松井の一挙手一投足をチェックしている。 桐光学園が五回コールド勝ちを収めた22日の横浜商大との5回戦も、同コーチは炎天下でスコアブックにペンを走らせていた。続けて行われた一戦で横浜が3対2で横浜隼人を下し、準々決勝での対戦が決まると「攻略法はありますよ」と不敵な笑みを浮かべている。 4月21日に行われた春の県大会の4回戦で桐光学園に0対3で屈した。以来、「打倒・桐光学園、打倒・松井」がチームの合言葉となった中で導き出された答えは、野球のセオリーに逆行する三段構えの「揺さぶり作戦」だった。 【攻略法その1】打線に左打者を多く並べる 左対左なら投手が優位に立つ。野球界の常識と言われて久しい相性の悪さを承知の上で、あえて打線に左打者を多く配置する。理由は今年に入って松井が習得した、新球チェンジアップにある。小倉コーチがゆっくりと「攻略法」の中身を紐解いてくれた。 「右バッターへの勝負球としてチェンジアップを使い出したけど、あれはちょっと打てない。あれを打とうと思ったら大間違い。右バッターのアウトコースへフォークボールみたいに落ちてくる。でも、左バッターにはチェンジアップをほとんど投げてこないからね。右バッターを並べるよりも、むしろ左バッターの方が松井君を打ちやすいんじゃないかと今では思っている」 困ったらインコース一辺倒で最後は光星学院(青森)の右バッターに痛打され、甲子園大会の準々決勝で姿を消した昨夏の悔しさを糧に、松井はチェンジアップを習得した。今では「投球の幅が広がったし、いいボールを覚えたと思っています」と大きな手応えをつかんでいる。 バッテリーを組む1年生の田中幸城も、こんな青写真を描いていたほどだ。 「松井さんのチェンジアップが有効だと思える右バッターと当たらなかったので、これまではあまり使わなかった。でも、相手が横浜ともなれば違ってくると思う」 打線に左打者を多く並べることで、新球チェンジアップの効力を封印。左バッターは、ストレートかスライダーのいずれかに的を絞ることができるわけだ。左腕と対峙した5回戦の横浜隼人戦では、5人の左バッターが先発した。桐光学園戦ではさらに増える可能性がある。