AI開発でノーベル賞のハサビス氏、日本棋院を訪問 井山王座と対局
今年のノーベル化学賞に決まった米グーグル傘下ディープマインド社の最高経営責任者(CEO)のデミス・ハサビス氏(48)が21日、東京都千代田区の日本棋院を訪問した。ハサビス氏の来日に合わせ、日本棋院がハサビス氏側に来院を打診して実現した。 ハサビス氏はAI(人工知能)が自ら学習し判断能力を高める「ディープラーニング(深層学習)」技術を導入し、囲碁AI「アルファ碁」を開発した。「アルファ碁」は2016年、いずれも世界トップクラスの実力を持つ李世乭(イセドル)九段(韓国)との五番勝負を4勝1敗、17年には柯潔(かけつ)九段(中国)との三番勝負を3戦全勝するなど圧倒した。囲碁は、チェスや将棋よりも展開が複雑で、AIが人間を打ち負かすのは難しいとみられていただけに大きな衝撃を与えた。そして今年、AIを利用した「たんぱく質の構造予測」の研究開発に貢献したと評価され、ノーベル化学賞に決まった。 この日は、ハサビス氏自身が井山裕太王座(35)と記念対局。序盤で終了したが、井山王座は「一手も悪い手はなかった」と振り返り「アルファ碁の出現は棋士にとっても囲碁界にとっても衝撃的だった。AIの発展に囲碁が少しでも役に立てたのであれば、棋士としてこれ以上の幸せはない」と話した。ハサビス氏は「アルファ碁の大成功がAI近代化の一歩を踏み出すことにつながった。AIの力を借りながら大きな課題を解決し、さまざまな疾患の治癒につながることを心から願う」と語った。 この後、ハサビス氏は一力遼本因坊(27)と対談。一力本因坊が「AIと人間はどう向き合えばいいのか」と質問すると、ハサビス氏は「次のAIのフェーズとしては10年間ということになるが、AIを使いながら専門家が持っている知識やスキルを組み合わせてやっていく方法が、囲碁を含めた分野で見られるのかなと思う」と答えた。【武内亮】