実は現状で旧姓使用はこんなに広がっている…自民党総裁選で話題沸騰の選択的夫婦別姓制度が「必要ない」といえるこれだけの理由
かなりの不便は解消できる
もっとも、夫婦同氏制度によって不便を感じている人たちがいるのは事実だ。 例えば、学術論文を発表するのに、結婚して姓が変わったために、連続した自分の業績として認められにくいといったことはありうることだ。これを何とかしてほしいといった問題は当然ある。そうしたことに対して何らかの手当を考えることは必要だろう。 しかしそのために制度を抜本的に変えなければならないと考えるのはやはり稚拙であって、多くの人達によって共有されている意識をなるべく傷つけないようにしながら、改善を図るというのが、本来あるべきあり方ではないだろうか。 私は高市早苗氏が法律案としてまとめているようなあり方、つまりファミリーネームとしては同一の氏を受け入れながら、通称としては旧姓(旧氏)を利用できるようにすることで、ほとんどの不便は解決するのではないかと思う。 小泉進次郎氏は多くの金融機関では旧姓で銀行口座を作ることができないと言っていたが、今や8割の銀行で旧姓対応ができるようになっている。 小泉進次郎氏は自民党総裁選挙への出馬会見で、旧姓では特許の取得ができないと語っていたが、こちらは令和3年に氏名欄への旧氏の併記を許容するようになっている。 小泉進次郎氏は通称使用では不動産登記ができないとも語っていたが、「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(令和6年法務省令第7号)により、現在の所有権の登記名義人の氏名に旧氏(旧姓)を併記することができるようになっている。 特許や不動産登記については旧氏のみでは対応できないではないか、併記では婚姻しているという個人情報が漏洩するではないかという反論もあるが、それはそれほど大きな問題ではないだろう。 問題は旧氏で認証されるかされないか、旧氏で権利を主張できるかできないかであって、その要件を満たしている以上、特に問題にすることではないだろう。「あの人、結婚していたんだ。じゃあ、この不動産取引をやめよう」なんて人はいない。 もともと名前は自らの意思で選択できるものではない。いわゆる「キラキラネーム」を親に付けられて、小っ恥ずかしい思いをしている人も多いだろう。ありふれた姓の家に生まれた人は、もっと珍しい姓の方がよかったと思うこともあっただろうし、逆に珍しい姓の家に生まれた人は、もっとありふれた姓に生まれたかったなんて思うこともあっただろう。 芸人となり、芸名が広く知られるようになった人は、芸名で銀行口座を開きたい、パスポートを作りたいなんて思ったとしても、おかしなことではない。 しかし名前を簡単に変更できるようにすれば、それは犯罪歴を隠蔽することにも使えるから、名前の使用についての自由が制限されるのは、ある程度仕方ないものとして受け入れていくべきものだ。