ゴールデン・グラブ賞と無縁が不思議 巨人の「守備の名手」が不可欠な存在に
常勝軍団には名二塁手
課題の打撃でも成長の跡を見せ、守備力は申し分ない。他球団のスコアラーは「ゴールデン・グラブ賞を獲得したことがないのが不思議なぐらい。二塁での守備力は球界トップクラスです」と評する。 高い壁として立ちはだかったのが、菊池涼介(広島)だ。2013年から二塁で歴代最多の10年連続ゴールデン・グラブ賞を受賞。その牙城を中野拓夢(阪神)が崩した。遊撃から二塁にコンバートされた昨年に初受賞。投票結果を見ると110票で、2位・菊池の107票とわずか3票差だった。吉川は3位で70票。阪神は捕手・坂本誠志郎、一塁・大山悠輔、二塁・中野、遊撃・木浪聖也、外野・近本光司と5人が獲得した一方で、巨人からは8年ぶりに1人も選出されなかった。
新聞記者による投票のため、印象度が左右する点は否めない。吉川も一度受賞すれば、その後に何年も連続で獲得する可能性が十分にある。二塁は奥深いポジションだ。かつて巨人の名セカンドとして活躍した野球評論家の仁志敏久氏は、週刊ベールボールの取材でこう語っている。 「難しい打球をいかにアウトにするか。そのための選択肢の多さが良い二塁手の条件だと言えます。そもそもセカンドというのは、捕球するために動く方向と、一塁へ送球するために動く向きが異なることが、ほかよりも多い。例えば、二遊間の打球なら右に動いてから左に体を切って一塁へ送球。一、二塁間なら左に動いて捕球をするものの、一塁に対して角度が付くので、体を右に反転させなければいけません。つまり、捕球→送球の一連の流れを作りにくいのです」 「そこで求められるのが、送球を考えた体勢で捕球すること。それも瞬時に判断する必要があります。『捕り方は投げ方』というのが僕の考え。捕球と送球は連動しており、送球の技術が高ければ少々、無理な体勢で捕球してもアウトにすることが可能になる。選択肢が多くなり、幅が広がるのです」 常勝軍団には、二塁に名手がいる。今後も吉川の守備に要注目だ。 写真=BBM
週刊ベースボール