「偽手りゅう弾禁止条例」も登場、迷惑防止条例って何?
この6月、福岡県は「迷惑防止条例」に、公園やバス・列車内などの公共の場に模造爆発物を放置してはいけない、という一項を加えた。模造爆発物とは、手りゅう弾の玩具やリード線が付いた容器など「爆発物と紛らわしい外観を有する物」のことだ。違反すれば、6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金刑が科せられる。全国に類を見ない条例だが、なぜこんな条例が制定されたのか? 福岡県では過去4年間に、暴力団事務所や企業経営者宅に手りゅう弾が投げ込まれたり、鉄道駅で偽手りゅう弾が発見されたりするという事件が11件も起こった。福岡県民にとって、手りゅう弾とそのまがい物はとても〈身近な危険〉になっていたのである。 実物であれば、爆発物取締罰則などで摘発できる。だが、模造品は対象外であり、本物でも中に火薬が入っていなければ検挙できない。真贋判定が難しいだけでなく、県警担当者いわく「愉快犯が出れば、治安悪化のイメージが全国に広がり、企業誘致にも影響しかねない」(産経新聞7月28日)ということで、それなりに切実だ。
「ヘンだけど理解できなくもない」
「迷惑防止条例」を制定しているのは、福岡県だけではない。47都道府県のすべてが「公衆に著しく迷惑をかける行為(暴力的不良行為等)の防止に関する条例」といった名称で制定している。「迷惑を防ぐ」という極めてあいまいな狙いながら、「手りゅう弾禁止」と同じく、多くの住民が「う~ん、なんかヘンだけど、理解できなくもないなあ」という落としどころに落とし込んだローカル・ルールなのである。 「迷惑防止条例」が制定されるようになったのは、1960年代前半のこと。当時、社会問題になっていた愚連隊(不良集団)の粗暴行為を禁止するのが目的だった。ゆすりたかり、ダフヤ行為、押売などが主な対象だったが、その後、客引き、ピンクビラ配布、痴漢、盗撮、ストーカー行為なども加わった。 条文はどの自治体も似たりよったりで、ストーカーに関連する「嫌がらせ行為の禁止」では、「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等に押しかける」「電話をかけて何も告げず、拒まれたにもかかわらず電話をかける」などという古典的な嫌がらせ行為を禁じる条文が大半だ。