中国政府の「不動産買い取り政策」はそう簡単には行かない
久しぶりに歩く上海の街角はあいかわらずの賑わいで、とても景気が悪いようには見えなかった。ただしよくよく見ると、ショッピングモールなどでは閉鎖している店舗も目立つ。地元の人たちに尋ねてみると、これは皆さん「スマホで買い物」に慣れてしまい、わざわざ店舗で買い物をしなくなったからだそうだ。デジタル化が進んだのみならず、各家庭に低料金で商品を届けてくれるバイク便のサービスが急成長しているのである。 たまたま夕方の時間帯に、市内の某高級タワマンのロビーをのぞく機会があった。そこにはひっきりなしにバイク便がやってくる。晩飯どきが近づくにつれて、住民たちが注文したケータリングが届くのである。ゆえにドアマンはほぼ5分おきに、彼らをエレベーターまで案内しなければならない。いくらデジタル化が進んでも、「ラストワンマイル」は結局、人力に頼らざるをえないのだ。やっぱり日本では真似ができないことだけは間違いがない。
などと、今回は短期出張の見聞ベースの話が多くなるのだが、中国経済といえばやはり不動産問題に触れないわけにはいかない。中国の大手不動産ディベロッパー、恒大集団や碧桂園が経営破綻しているのはご案内の通りだが、4月に中国広東省・深圳に本拠を置く万科企業が格下げになったことが注目されている。同社は政府系なので、「いよいよ不動産問題の解決に向けて、中央政府が重い腰を上げるのではないか」との観測が飛び交っている。
■不動産買い取りは、やっぱり一筋縄ではいかない 「7月に開催されるという三中全会において、政府による不動産買い取り策が論じられる」との期待もある。売れ残り住宅を政府が買い上げてくれるのなら、ようやくこの問題にも薄日が差すというものだ。しかるにその場合に生じるのは、1990年代日本の不良債権問題を記憶している人にとっては、馴染みのある「懐かしい」選択となる。それは買い取り価格をどうするかという問題だ。