中国政府の「不動産買い取り政策」はそう簡単には行かない
■EV高普及率に納得、今はバッテリー交換業者が乱立状態 6年前の上海の路上は、グリーンのナンバーはせいぜい全体の1割程度にすぎなかったから、いかにEVが増えたかということになる。この間にいったい何が起きたのか。 上海でクルマを手に入れるときには、ドライバーはクルマに乗る権利を10万元程度(現在のレートで約220万円)で買う必要がある。それに加えて車両価格を払うわけだから、クルマの保有はまことに高くつく。ところがEVを買う場合は、その権利金がいきなりタダになってしまう。それなら誰だってEVを買いますわなあ。しかも当たり前の話だが、燃料費はガソリン代よりも電気代のほうが安いのである。
ただしEVがここ数年で急に普及したせいで、「充電装置の前にクルマの行列ができてしまう」なんて現象も起きている。充電装置が足りないということで、上海のような大都会はともかく、地方都市ではEV離れが起きている、なんて話も聞くところだ。 筆者などは、「EVは中古車価格が心配」と思ってしまうのだが、そもそも中国人ドライバーには「クルマは資産」という発想が薄いらしい。ただし電池が劣化したときのことはさすがに皆が考えるので、すでに「バッテリーの交換業者」が乱立しているとのこと。機を見るに敏とはいえ、何でも過当競争になってしまうのは中国経済の常である。
お上が「次はこの産業だ!」と言えば、民間企業がどっと参入してきて、EVでも電池でも再エネ事業でもすぐにレッドオーシャンになってしまう。「中国経済の過剰生産能力」は、こんな風にして生じるのである。 5月22日、アメリカの通商代表部(USTR)は中国製EVに対する制裁関税を8月から100%に引き上げると発表した。「秋の大統領選挙目当て」「『もしトラ』に対するバイデン政権の対抗措置」といった観測もあるけれども、「とにかく中国と競争するのはご勘弁」という思いがあることは想像にかたくない。