「良質な脂質を含む魚は、コンディショニングの肝」藤光謙司さんと魚食
カラダが資本のアスリートにとって、食べることもトレーニングの一環。最高のパフォーマンスを支えた「魚食」について伺った。今回は「元陸上男子短距離日本代表・藤光謙司さんの魚食」について。
プロフィール
藤光謙司(ふじみつ・けんじ)/元陸上男子短距離日本代表。中学時代から陸上を始め、高校時代に世界ユース選手権日本代表に選出される。2016年リオデジャネイロ五輪出場。17年ロンドン世界選手権大会400mリレーでアンカーを務め、銅メダル獲得に貢献。現役時代に起業し、〈ニューネックス〉代表を務める。
パフォーマンスが向上し、食の大切さを実感
現在、起業家としてアスリートと社会をつなぐ活動をする傍ら、元陸上選手としての知見を活かして健康にまつわる情報発信もしている藤光謙司さん。食に関心を持ったのは、かつて怪我に悩み、食事によって故障しにくいカラダに改善した経験があったから。 「10代の頃は栄養など二の次で、お腹を満たすことが優先でした。若いから、カラダに悪いものほどおいしく感じたりもして。故障が多くこのままじゃいけない、と一念発起して、食の改善をしたのが大学の後半くらい。パフォーマンスが向上し、食の大切さを実感しました」 社会人になり寮を出て、自身で食事を管理するようになると、魚を食べる機会も増えた。 「血液検査で脂質不足という結果が出たこともあって。脂質が足りないと、筋膜炎や肉離れを起こしやすくなる。良質な脂を摂取するために、魚を食事の重要な要素として取り入れるようになりました。 かまぼこやちくわは、手軽にタンパク質を摂れるのでよく食べましたし、今でも自らプロデュースするフィッシュプロテインシリーズを重宝しています。また、オメガ3脂肪酸が豊富な鮭は、毎日欠かしませんでした」
鮭、卵、味噌汁、ご飯に納豆。これは藤光さんが現役時代に10年以上食べ続けていた朝食メニュー。 「栄養学に沿った一般論が、自分に合わない場合もあると思うんです。カラダは常に変化しているから、食も随時アップデートしていきたい。良いと聞いたものは片っ端から食べてみて、何を食べるとコンディションが上がるか、自分のカラダを実験台にして、都度確認してきました」 「現役時代に朝食メニューを固定したのも、その実験の一環。ルーティーン化すれば、それ以外のものを食べた時に、感覚やカラダの変化がわかりやすくなりますから」 サプリには頼らないのも藤光流。 「これも同様で、自分のカラダにマッチするものを探す労力を考えたら、食事から自然な栄養を摂ったほうがいい、というのが僕の考えです」 引退後の今も、食事には気を配る。 「今は“変なものは食べない”がモットー。良いものを、と心がけるよりも手っ取り早いから。とは言っても、悪いものを食べても対応できる免疫力を維持するために、たまにはジャンクフードも食べます。自分に備わった力を高めるために、試行錯誤しながら食を楽しんでいます」
取材・文/間宮寧子(初出『Tarzan』No.873・2024年2月8日発売)