ラリー・ジャパンであわや大事故 一般車両が進入 実行委に罰金
愛知県豊田市、岐阜県恵那市などで21~24日に開催された世界ラリー選手権(WRC)の今季最終戦「ラリー・ジャパン」。大会第3日の23日、恵那市内の競技区間で無許可の一般車両がコース内に進入し、その日のラリーが中止となる異例の事態となった。 【写真特集】世界ラリー選手権の最終戦「ラリージャパン」 トヨタが優勝 WRCの審査委員会は、対応が不十分だったとし、大会を主催する実行委員会に15万ユーロ(約2400万円)の罰金を科すと発表。実行委は岐阜県警恵那署に被害届を提出し、同署は進入した車両を運転していた男性から任意で事情を聴いている。 ◇約520メートル逆走 実行委などによると、一般車両が進入したのは恵那市山岡町田沢地区内の公道を使用した「スペシャルステージ(SS)12」と呼ばれる全長約22・8キロのコース上。 ラリーは23日午前10時15分ごろから大会に出場する競技マシンが数分間隔で順番にスタート。同33分、通行規制されていない公道から競技用コースへワゴン車1台が進入し、マシンのスタート地点に向かって約520メートル逆走した。 動画投稿サイト・YouTube(ユーチューブ)には、一連の様子を撮影した動画が投稿されており「うそお……何か起こった? それともまぎれ込んでる? え、どこから?」という観客の驚きの声が聞こえる。 ワゴン車を運転していた男性は、大会スタッフの指示に従わず、ワゴン車はスタート地点付近に10分あまりとどまった。SS12にエントリーしていたマシン44台のうち38台がスタートを取りやめ、この日のラリーはそのまま中止となった。 ◇通行規制の不備指摘 けが人はいなかったが、マシンと一般車が正面衝突し、重大な事故につながっていた危険性もあった。24日、約2400万円の罰金を科したWRC審査委員会は「一般車が進入した地点ではマーシャル(警備係員)とテープによる通行規制しか実施されておらず、車両などの進入経路を塞ぐ障壁が設置されていなかった」などと理由を説明している。 審査委員会が指摘するような対策がなぜ取られなかったのか。欧州や東南アジア、国内のラリー競技歴が40年以上と経験豊富で、大会副競技長を務める依田統(おさむ)さん(65)は「欧州で何十年と継続して開かれる大会と比べるとラリージャパンはまだまだ成長途上。くまなく道路を封鎖したり、マーシャルを配置したりするのに制約も多いのが現実」と説明。そのうえで、「ラリーのスタート直前には、国際自動車連盟(FIA)のセーフティーカーも含め、コース内の安全確認を複数回入念に行う。現場のマーシャルが最善を尽くしている点は理解いただきたい」と強調する。 ◇周辺住民の理解不可欠 中山間地域の公道を利用したラリーには、周辺住民の理解も欠かせない。実行委の豊田市ラリーまちづくり課の担当者は「開催の意義や高速で走るマシンの危険性も含め、数年単位で説明してご理解いただいてきた。身勝手にコースに進入されたことへの憤りはある」と話した。 実行委は車両進入を受け、次のステージから現場に障害物を置いて、車両が物理的に進入できないような措置を講じた。ラリージャパンは来年大会も豊田市、恵那市などでの開催を予定しており、実行委の豊田市の担当者は「今回の原因をしっかり究明し、さらに安全対策を強化したい」と話している。【梶原遊】 ◇ラリー・ジャパン 公道を走る自動車競技の最高峰・世界ラリー選手権(WRC)の日本ラウンド。2004年に北海道十勝地方で始まり、10年までに計6回道内で開催。その後途絶えていたが、かつて参戦していたトヨタ自動車が17年にWRCへ復帰。22年に12年ぶりに開催されて以降は愛知、岐阜両県が舞台となっている。