行き詰った「大阪都構想」そもそもの狙いは?
大阪市の橋下市長が辞職して出直し選挙に立候補すると宣言し、「大阪都構想」に注目が集まっています。辞職のきっかけは、都構想を話し合う協議会で大阪都の区割り案をひとつに絞り込む提案が各党に反対され、実現がむずかしくなったことです。橋下市長は3月に予定される出直し選挙で、あらためて大阪都構想実現の是非を問いたい、としています。この「大阪都構想」とはどのような制度なのでしょうか。 【年表】橋下氏と大阪都構想をめぐる動き
大阪都構想とは、大阪市と堺市の2つの政令指定都市を廃止して、5区~7区の特別区に分割、大阪府と合併させて「大阪都」を設置するというものです。かつての東京府が東京市を廃止、東京都となって23の特別区をつくったのをモデルに、橋下市長が府知事時代の2010年に提唱。以来、その政治活動の中核となってきた政策です。 なぜ「大阪都」の実現が必要とされているのでしょうか。
府と市の二重行政を解消
橋下市長は「都道府県と政令市の間にある二重行政を解消するため」と主張しています。都道府県や市町村は、その規模に応じてそれぞれ役割を分担しています。しかし、人口や財政規模が大きい「市」には特例制度が設けられ、都道府県並の権限や財源を持っている場合もあります。これが政令市で、政令市と道府県ではお互いの意向が食い違うことがあるのです。大阪府と大阪市をめぐっても、以前から同じような業務を両方でやっている「二重行政」が指摘されてきました。 たとえば、大阪湾ベイエリア開発は二重行政の象徴的な例といわれています。この事業では、大阪府と大阪市が競い合うように、それぞれ高さ約256メートルもの大きな中核ビルを建設。開発費用として府が659億円、市が1193億円も投じながら、その後両方とも経営破たんしてしまっています。ほかにも、府立体育館(56億円)と市立中央体育館(487億円)、府立中央図書館(191億円)と市立中央図書館(162億円)など、同じ地域に似たような公共施設が重複して作られたケースがたくさんあります。こうしたムダな支出によって財政が悪化し、納税者の負担も増大しているのです。