法定相続分による相続登記に注意 問題点や不動産を共有するデメリットを解説
3. 共有不動産のデメリット
では、不動産を共有状態にしてしまうとどのようなデメリットが生じるのでしょうか。 3-1. 不動産の売却が煩雑になる 遺産分割協議がまとまらず、結論の先延ばしを目的として共有状態にしてしまうと、あとで不動産を売却するときに手続きが煩雑になります。なぜなら、不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要となり、1人でも同意を得られなければ、売却することができないからです。 どこの仲介業者に頼むかに加え、売却価格の交渉など、他の相続人にイニシアティブをとられたくないという理由で同意しないケースもあります。また、売却の同意が得られたとしても、共有者全員が媒介契約や売買契約の当事者となるため、手続きがスムーズに進まないという問題が生じます。 3-2. 共有者がさらに増えてしまう 共有状態のまま放置して長期間が経過すると、共有者に新たな相続が発生し、ねずみ算式に共有者が増えていく可能性があります。 たとえば、法定相続人4名の共有名義となっている不動産について、相続人のうち1人が亡くなったとします。亡くなった相続人の法定相続人が3名だとすると、この不動産の共有者は4名から6名になります。このように法定相続による相続登記をきっかけに共有者がどんどん増えていく事態が生じます。 3-3. 管理方法をめぐってトラブルになる 実家を相続した場合に、その実家に住んでいる相続人と住んでいない相続人の間で持分割合に応じた賃料の支払いを求めるなど管理方法や収益分配をめぐって意見が対立する可能性が考えられます。 一方、空き家になっている場合には、管理費(固定資産税、修繕費等)や老朽化して解体せざるを得なくなったときの費用を誰が負担するのかが争いの種になることもあります。 3-4. 第三者への持分譲渡や差押え 法定相続分による相続登記をすれば、各相続人が取得した所有権持分はその相続人の固有財産となります。その結果、各相続人は自分の持分を第三者に自由に譲渡することができますし、相続人の債権者がその持分を差し押さえる可能性もあります。たとえば、ある相続人がお金に困って不動産の持分を第三者に売却してしまい相続には全く関係のない第三者が共有関係に入ってくるような事態が生じるかもしれません。