法定相続分による相続登記に注意 問題点や不動産を共有するデメリットを解説
2. 法定相続分による相続登記の問題点
法定相続分による相続登記のほうが遺産分割に比べると手続き的な負担が少ないですが、安易に行ってしまうと次のような問題が生じます。 2-1. 登記の内容を変更する場合、追加で手間と費用がかかる たとえば、相続人A、B、Cが持分3分の1ずつ法定相続分による相続登記を行ったあとに、遺産分割協議によってAが単独で取得することが決まったとします。この場合には、B、Cの持分全部をAに移転する遺産分割による相続登記を行わなければならず、追加で手間と費用がかかります。場合によっては、B、CからAへの贈与とみなされて贈与税が課されてしまう可能性もあります。 2-2. 申請人以外には登記識別情報通知が発行されない 法定相続人のうち誰か一人が代表して申請人となり法定相続分による相続登記を申請した場合、申請人となった相続人にのみ登記識別情報通知(いわゆる権利証)が発行されます。つまり、申請人にならなかった他の相続人には登記識別情報通知が発行されず、所有者でありながら権利証がない状態になります。 相続した不動産を売却したり、融資を受けるために担保権を設定したりする場合には、登記識別情報通知が必要となります。しかし、上記のとおり申請人にならなかった相続人には登記識別情報通知が発行されていないため、結果として本人確認情報(登記識別情報通知の代替書類として司法書士が作成するもの)の作成料など余分な手間や費用がかかることになります。本人確認情報作成料は司法書士ごとに異なりますが、相場としては1人につき5万~10万円ほどです。 2-3. 不動産が共有状態になる 法定相続人が複数名いる場合には、法定相続分による相続登記を行うと不動産が共有状態となります。兄弟姉妹が多い場合や代襲相続が発生している場合など、法定相続人が10人以上になることもめずらしいことではありません。 複数人で不動産を共有している状態になると、売却するときに手続きが煩雑になったり、管理や処分方法をめぐって意見が対立したりとさまざまな問題が生じる可能性があります。 次に不動産を共有状態にすることのデメリットを詳しく解説します。