「侍タイムスリッパー」がヒット!山口馬木也の時代劇での演技は「剣客商売」シリーズでも光る
今、最も注目度が高い俳優・山口馬木也。1998年の日中合作映画「戦場に咲く花」で役者としてのキャリアをスタートさせ、2000年に公開された「雨上がる」で時代劇に初挑戦。同作は「阿弥陀堂だより」、「博士の愛した数式」などを手掛けた小泉堯史監督が、山本周五郎の小説を原作に、黒澤明が執筆していた脚本を補作して映画化したもの。主演は寺尾聰が務め、山口は野田又四郎役で出演した。この"時代劇"が重要なポイントで、山口が今注目されているのは、まさに"時代劇"がきっかけとなっている。 【写真を見る】「剣客商売スペシャル 助太刀」に出演する山口馬木也 「侍タイムスリッパー」という作品が2024年8月17日に劇場公開された。その時は東京の池袋シネマ・ロサ1館のみの上映だった。8月30日から神奈川・川崎チネチッタで「デラックス版」(カットされていたシーンを含むバージョン)で公開されると、その後、9月以降に50館以上の映画館で公開されることが発表され、口コミで映画の評判が広がり、12月に入った今でも劇場での公開が続いている。今では上映された劇場の数が340を超えるほどの大ヒットに。 同作の舞台は幕末、会津藩士の高坂新左衛門(山口)が長州藩士を夜に襲撃した。刀を合わせた死闘を繰り広げる中、落雷によって高坂は意識を失ってしまう。目覚めるとそこは現代の京都。場所がちょうど時代劇の撮影所だったこともあり、高坂はまさか違う時代に飛ばされたとは思ってもいない。しかし、徐々に状況を把握し、時代劇の"斬られ役"として生きていくことを決めた...。 時代劇に"タイムスリップ"というSF要素を絡めたコメディ映画として、幅広い層に支持されることとなった。時代劇の数が減ってきているという現実的な問題も包括しつつ、それでもやはり時代劇でしか味わえないものがあることを伝えてくれる作品に仕上がっている。 終盤の、かつて時代劇を盛り上げたスター俳優・風見恭一郎(冨家ノリマサ)と高坂の対決シーンは迫力があり、手に汗握るくらいのハラハラ感がある。キャリアの長い山口だが、「侍タイムスリッパー」が実は初主演作ということもあり、注目度が上がっている。 ■時代劇での山口馬木也の魅力は「剣客商売」シリーズでも光る! 時代劇の山口馬木也を楽しみたいのであれば、外せない作品として挙げられるのが「剣客商売」。時代小説の大家・池波正太郎の「剣客商売」を原作にしたテレビ時代劇で、何度も映像化されてきた。その1つ、1998年から始まった藤田まこと版「剣客商売」に山口がレギュラー出演していた。 山口が登場したのは2003年1月から5月にかけて放送された第4シリーズに、藤田演じる剣客・秋山小兵衛の息子・大治郎役を、第1・2シリーズで演じた渡部篤郎から引き継ぐ形で登場。続く第5シリーズと、6作の「スペシャル」にも出演した。 人気シリーズの途中参加ではあったが、第4シリーズの第1話を見ると、渡部篤郎の"大治郎"とはまた違う魅力を持つ"大治郎"だと感じられ、シリーズのファンにもすぐに受け入れられた。"剣一筋"の真面目な性格の大治郎役が、うまく山口にハマったということだろう。藤田まことをはじめ、小林綾子、第4シリーズで大治郎の妻となる三冬役の寺島しのぶ、梶芽衣子らとファミリーのような雰囲気でシリーズもスペシャルも見ていて安心感があった。 ホームドラマチャンネルでは山口が出演した「剣客商売スペシャル」全6作品を放送する。その中から「助太刀」、「母と娘と」、「女用心棒」の3作に注目したい。 2004年12月に放送されたスペシャル第1弾「助太刀」は、小兵衞が旧友の酒井善蔵(蟹江敬三)と再会。善蔵は大病を患っていたが、娘・お信(中原果南)の看病のおかげで回復した。忠兵衞(山田純大)という婿も得て、封鎖した道場を再興する。一方、大治郎は道端で扇子を売る浪人・林牛之助(益岡徹)と知り合う。牛之助は父親の敵を探す若者・伊織(石田法嗣)に剣を教えていたが、伊織の敵が忠兵衞だということが分かった...。複雑な人間模様が描かれ、見応えのある展開になっている。 2005年1月放送のスペシャル第2弾は「母と娘と」。小兵衞は余命いくばくもない村松太久蔵(夏八木勲)と知り合った。彼の娘さよ(宮本真希)は病で死んだ母親の顔を知らない。同じ境遇の三冬は、さよを妹のように思った。一方、大治郎は大店の金庫番・源太郎(高杉瑞穂)が浪人に襲われているところを助けたが、彼の父親はかつて小兵衞が捕らえた罪人だった。太久蔵の見舞いからの帰り道、三冬とさよは与太者に絡まれている女絵師・瀬川幽仙(松原智恵子)を助けるが、さよの名を聞いた幽仙の顔色が変わった...。豪華女優陣の共演もこの作品の見どころとなっている。 そして「女用心棒」は、2006年6月に放送された第4弾。誘拐されそうになっていた娘・お雪(大西麻恵)を三冬が助けた。彼女は大店の小間物問屋・山崎屋の一人娘だった。山崎屋の隠居・鉄五郎(大滝秀治)と小兵衛は以前から付き合いがあり、鉄五郎から家の事情を聞き出すことができたのだが、娘婿の卯兵衛に店を継がせたくない鉄五郎は、孫のお雪に婿養子を取ってもらって店を譲るつもりだという。お雪には思いを寄せる人がいるのを知っているが、店のために縁談を進めている鉄五郎。お雪を守るために三冬は用心棒を務めることに。小兵衞、大治郎、そして三冬の大立ち回りなど、迫力のある殺陣が見どころ。 「侍タイムスリッパー」や「鬼平犯科帳・桜屋敷」など、"時代劇"の良さを再発見させてくれる作品に出演している山口。そんな山口の演技を、「剣客商売スペシャル」からも感じ取ってもらいたい。 文=田中隆信
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