【七夕賞回顧】末脚勝負でひと皮むけたレッドラディエンス、夏の中距離王へ収穫多き快勝 2、3着も新潟記念でのさらなる前進に期待大
末脚勝負で良さが出たレッドラディエンス
勝ったレッドラディエンスは通算【5-5-1-1】。馬券圏内をはずしたのは新馬戦だけという堅実派だ。 競馬は勝てばどんどん相手が強くなるわけで、オープンまで4勝をあげつつ、崩れなかったのは力のある証拠ではある。反面、勝ち味に遅いタイプで、歯がゆさも感じた。 これまでは先行する競馬が多く、前から粘り込む形をとっていたが、今回はハイペースと小回りを意識し、あえて控える形に。 離れた後方馬群の先頭という比較的プレッシャーが少ない位置をとれたのは大きく、末脚比べにかけた作戦が当たった。総じて末脚勝負に強いディープインパクト産駒の強みを発揮できたからこそ、重賞初挑戦で初制覇を達成できた。 競馬では器用なことは加点材料だが、破壊力にひっくり返されがち。その代表がディープインパクト。レッドラディエンスはハイペースに乗じてひと皮むけたとみる。前半は中団あたりで脚を溜め、後半にかけるスタイルでワンランク上へ進んでほしい。 福島での重賞勝ちから小回り巧者とみられるが、先行勢に辛い流れに乗じた差し切りだったので、そうともいえない。 小回り巧者にはコーナーで動ける機動力が不可欠。そこまで機動力は感じないので、ベストは広いコースで極端に速い上がりにならないレースだろう。新潟記念で期待できる。当然、サマー2000シリーズチャンピオンのチャンスだ。
新潟記念で逆転を狙える2、3着
2着キングズパレスはレッドラディエンスの後ろから競馬を進めた。 同じ上がり最速34.9では3、4コーナーでの物理的な差を縮められない。とはいえ、こちらも気性的に難しいところを抱えながら、大きく崩れない実力の持ち主。右回りはコーナリングや最後の直線に課題を残すが、今回はかなり解消されたようだ。 立ち回りが上手になったことで、重賞通用のメドを立てた。こちらも新潟大賞典2着の実績から、新潟記念での前進を見込める。今回も末脚比べでは互角だったので、位置取り不問の新潟なら逆転の目はある。 3着ノッキングポイントは中団で構え、ハイペースに巻き込まれないように立ち回ったが、ボーンディスウェイやダンディズムの仕掛けに呼応する形で、厳しい流れに身を投じた。さすがに最後は脚が鈍り、ダンディズムをとらえるので精一杯だった。 しかし、昨年の新潟記念の勝ち馬であり、福島より新潟に適性があるのは明らか。初体験の小回り(中山外回り1600mは小回りとはいえない)で粘れたのは、むしろ状態の良さを示した。 8着に終わった新潟大賞典は先行して形を崩したにすぎない。次走新潟記念なら、前進はある。57.5キロで結果を残したのもプラスだ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳