なぜ女性国家元首が世界中で急増? 専門家に聞く「各国で人材の質が上がった理由」
衛藤 それが今起きている変革だと感じます。今まで女性政治家といえば、福祉や教育分野において母親や妻としての気持ちを代弁することで女性票を獲得していた。 しかし、高市早苗さんに共鳴して期待していた支持層に男性は少なくなかった。つまり、「女性だから」「男性だから」というよりも、政策や思想の中身で評価されている。少しずつ女性議員が増えていることで、女性の政治リーダーへの違和感や嫌悪感が薄くなってきているのだと思います。 ――女性国家元首だけでなく女性政治家も増えているということですが、政治の現場に女性が増えることは果たしてプラスなのでしょうか? 衛藤 最近、企業がダイバーシティと盛んに言うのは、さまざまなバックグラウンドを持った人の中から優秀な人材を選ぶほうが合理的だということがわかってきたからです。 でも、それって当たり前ですよね。優秀な人を選ぼうとしたときに、なるべく分母を大きくするのは当然ですから。それは政治の世界も一緒です。「政治の現場に女性が増えるのはプラスか?」と考える前に「男性ばかりで政治することはプラスか?」と考えてみてほしいです。 メキシコのシェインバウム大統領はとても優秀な方ですが、メキシコで女性議員が増え始めたのは2000年代に入ってから。10年、20年という年月をかけて人数が増えたことで、彼女のような大統領が生まれた。 こうした女性国家元首の増加は一時的なブームではありません。女性政治家が世界中で増え続けている昨今、どの国でも生まれる可能性があるのです。 ★「【世界中で爆増!】15国、17人の女性国家元首たち ガラスの天井を突き破った彼女らの評価は?」はこちらから ●衛藤幹子(Mikiko ETO) 政治学博士。法政大学名誉教授。未来工学研究所シニア研究員。専門はジェンダー政治学で、女性の議会進出、クオータ制度など。著書に『政治学の批判的構想-ジェンダーからの接近』など 写真/アフロ