なぜ女性国家元首が世界中で急増? 専門家に聞く「各国で人材の質が上がった理由」
自民党総裁選やアメリカ大統領選などで注目された"女性国家元首"。高市早苗もカマラ・ハリスも負けてしまったが、世界では女性リーダーたちが増加している。イタリアやスイスなど西欧だけでなく、メキシコ、インド、タイなど各地で誕生しているのだ(参照:【世界中で爆増!】15国、17人の女性国家元首たち ガラスの天井を突き破った彼女らの評価は?)。 【写真】「女性と政治」が専門の衛藤幹子教授 なぜ近年になって、世界中で女性リーダーが生まれるようになったのか。政治学博士で、"女性と政治"を専門としている衛藤幹子法政大学名誉教授に、その理由を聞いてみた。 * * * ■急に増えたわけではなく、数十年かけて増えている ――女性リーダーの誕生は、いわゆる先進国だけではなく、世界的に起きている現象なんですね。 衛藤 もちろん昔から女性の政治リーダーはいましたが、その数は少ない上に、政治的な手腕というよりも、著名な政治家一家に生まれたり、嫁いだりした後に、大統領や首相を務めた父親や夫の後継者となって地位に就く人が多かったんです。 ――それでいうと、今年8月に就任したタイのペートンタン・シナワット首相の父は元首相のタクシン・シナワットで、野党からは「父の名前だけで首相になった」という批判の声もある。ただ、彼女のような政治家一家出身の女性はごく少数です。 衛藤 そうなんです。つまり、政治の世界で実力が認められて地位に就いている人が多い。これは、優秀な女性が突然変異のように世界中に生まれた結果ではありません。簡単に言うと、ただただ多くの国で女性の議員が増えただけなんです。 ――増えただけ? 衛藤 はい。物理用語で「クリティカルマス」という言葉があるのですが、これは「結果を得るために必要とされる量」のこと。 女性と政治の関係でいえば、その国の女性議員の比率が30%を超えると、影響力が強くなり、リーダーが生まれる可能性が高まるといわれている。まず、量が増えることで、当然、人材の質も上がるんです。 ――確かに、女性の国家元首を持つ国の女性議員率を見ると、メキシコでは上院下院共に50%、アイスランドは47.6%、北マケドニアは39.2%、ペルーは38.5%と高いですね。 衛藤 そうした国ではクオータ制という制度がさまざまな形で敷かれています。クオータ制とは、候補者や議席、政党幹部の一定比率を女性(あるいは両性)に割り当てる制度。世界的に女性の国家元首が増えているのは、そんなクオータ制が世界的に広がっているからです。 憲法で規定したり、守らなかった場合に罰則を設けたりする国も70ヵ国ほどあります。そのように強制力がある場合は即効性が極めて高いのですが、日本は努力義務止まり。そのため、衆議院の女性議員率は15.7%と低いままなのです。 ――しかし、そんな日本でも女性首脳が生まれかけましたし、5.3%のスリランカや13.7%のインドでも女性のリーダーが生まれています。