映画史上もっとも“スカッとする”結末は? 最高のラスト(3)批評家酷評も…日本でカルト的人気を誇った痛快作
日常のモヤモヤを吹き飛ばす。それも映画ならではの効能の1つだろう。 今回は、巧みなストーリー構成と大胆な演出で、観終わった後にスカッと気持ち良くなる海外映画を5本セレクトし、物語の内容から作品の魅力に至るまでたっぷりと紹介。映画史に残る名作をラインナップした。第3回。(文・阿部早苗)
『処刑人』(1999)
上映時間:110分 監督:トロイ・ダフィー 脚本:トロイ・ダフィー 出演:ウィレム・デフォー、ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダス 【作品内容】 主人公のマクマナス兄弟はロシアマフィアを撃退後、「悪人は殺しても構わない」という神からの啓示を受ける。やがて次々と悪人を成敗していく中で、パパ・ジョー率いるイタリアンマフィアを壊滅させようとする。 【注目ポイント】 アメリカ公開のタイミングで、コロンバイン高校銃乱射事件(1999)の影響を受け、1週間限定公開を余儀なくされた本作。当時、批評家からは厳しい評価を受けながらも、その後、アメリカ国内のビデオ販売では約5000万ドルの売上を記録。日本では劇場公開後、単館系でありながら、興行収入1億円を突破し、カルト的な人気を博した。2009年には続編にあたる『処刑人II』が公開された。 見どころは、何といっても神からの啓示を受け、法で裁かれない悪人たちを制裁していく双子のマクマナス兄弟の活躍だ。 ガンアクションを中心とした迫力満点の活劇シーンもさることながら、兄弟を演じるショーン・パトリック・フラナリーとノーマン・リーダスのイケメン2人の一挙手一投足が、うっとりするほど美しい。そして怪優・ウィレム・デフォー扮するFBI捜査官のスメッカーのいぶし銀の活躍も素晴らしく、終盤ではマクマナス兄弟の理念に共感し、女装姿でマフィアに立ち向かう。 マクマナス兄弟はパパ・ジョー率いるマフィアの組織をつぶすため、彼らの拠点で銃撃戦を繰り広げる。逆さ吊りで天井からゆっくり降りてきたマクマナス兄弟が回転しながら銃でマフィアを撃ちまくる場面は、映画ファン垂涎の名シーンとなっている。 クライマックスでは、パパ・ジョーが雇った伝説の殺し屋イル・ドゥーチによってマクマナス兄弟は窮地に立たされる。ピンチの2人は祈りを朗誦するが、それを聞いたイル・ドゥーチは明らかな異変を見せる。なんと、イル・ドゥーチはマクマナス兄弟の父親だったのだ。 パパ・ジョーはイル・ドゥーチによって兄弟が死んだものと早合点。余裕しゃくしゃくで裁判に出廷するも、そこに現れたマクマナス兄弟によって射殺され、見事にミッションが果たされる。 ピンチに陥る主人公2人が意外な形で攻勢に転じる展開、銃撃戦からの祈り、さらにその後の逆転劇、という緩急に富んだ演出が興奮をかき立てる本作、25年ぶりとなる新作『処刑人3』が目下製作中だという。マクマナス兄弟の25年後の姿に加え、どんなアクションシーンが披露されるのか注目したい。 (文・阿部早苗)
阿部早苗