『海のはじまり』村瀬健Pが明かす撮影の裏側 目黒蓮は「相手の能力を吸収していく」
目黒蓮(Snow Man)が主演を務める『海のはじまり』(フジテレビ系)が、9月23日で最終回を迎える。本作は、大学時代の恋人・南雲水季(古川琴音)の葬儀で、彼女の娘・海(泉谷星奈)が、自分の子だと知ることから始まる月岡夏(目黒蓮)の物語。 【写真】『海のはじまり』目黒蓮らの場面写真(複数あり) 夏と海の関係性、夏の恋人・百瀬弥生(有村架純)の胸中、津野晴明(池松壮亮)の過去など、登場人物それぞれに想いを馳せてしまう本作を深掘りするべく、村瀬健プロデューサーに話を聞いた。 ●ジョン・ウンヒ監督と池松壮亮の信頼関係が生んだ名シーン ーーこれまで放送されたなかで、思い入れのあるシーンについて教えてください。 村瀬健(以下、村瀬):僕と脚本の生方美久さんは、『silent』(フジテレビ系)で風間太樹監督、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)でジョン・ウンヒ監督、両作品で髙野舞監督とご一緒した経験があるから、役者と同じように監督も若干ですが当て書きにしている部分があります。脚本を作るうえで、3人の持ち味も考えるので、それぞれ名場面が違うんです。 ーーそれぞれの名場面について詳しく教えてください。 村瀬:風間監督は、夏が朱音(大竹しのぶ)から「この7年の水季のこと、想像はしてください」と言われた後、海の「夏くん!」と呼ぶ声と水季の声が重なる第1話のお葬式会場の外のシーン。海が名前を呼んだ直後、砂浜にいる水季の映像が入って一瞬の静寂となり、音楽が流れる……という、芝居を見せつつ、同時に映像で魅せるあのシーンは、風間監督の真骨頂。風間監督らしさが出た名シーンだと思っています。髙野監督は第3話のラスト。back numberの主題歌に乗せて、海と夏が砂浜で語るシーンですね。髙野監督って、2人がただそこにいてただ話しているみたいに自然に撮る演出がめちゃくちゃうまいんですよ。本当に優しい方なので、彼女の優しさが夏と海にも伝わり溢れ出た、素晴らしいシーンだと思います。ジョン監督は、水季が亡くなった知らせを受ける第7話の津野くんの電話シーンですね。水季に残された時間が少ないと気づいているなか、電話の相手が朱音だと分かって「はい」と出る。実はあのシーンって、台本では「はい」だけで終わっているんです。でも、ジョン監督は池松さんにその先の芝居もしてもらいました。あまりに良かったので、まるまる残しました。ジョン監督と池松さんの信頼関係が生んだ名シーンです。 ーー今回のドラマには、ナイーブなテーマが詰め込まれているように感じます。そこを描く上で意識していることはありますか? 村瀬:こうしたテーマを扱うと当然いろんな意見があります。社会問題は一面からだけでは描けないし、それぞれ考え方が違うので、厳しい意見もいただいています。ただ、生方さん、僕、監督たちも含めて伝えたいことはあって。子宮頸がんを取り扱ったのも、弥生が三谷彩子(杏花)に「検診に行きなよ」と言うように、そうしたことを考えてほしい、みんなで考えていこうよという思いがあるからです。 ーーなるほど。 村瀬:中絶に関しても、僕らは「中絶が悪いもので、産むことが正しい」なんてまったく思っていません。人それぞれいろいろな考え方があって、抱えているものがあるから正解はないし、「どちらがいい・悪い」と言うつもりもまったくなくて。キャラクターによって発言が違ったり、端的に捉えられたりして「中絶が悪いって言われているようで辛いです」というようなご意見をいただくこともあるんですが、でも全編を通して観ていただいたら、「そうではない」と感じる伝え方になるよう心がけています。命って大切なものだし、重要なもの。ナイーブなことを題材にしている意識を常に持ち、いろんな人の意見に耳を傾け、常に胸に手を当てて考えながら作っています。 ーー登場人物たちの台詞で救われている人も多いと思います。台詞を提示していくうえで意識されることはありますか? 村瀬:生方さんは類いまれなる才能をお持ちなので、よほどのことがないかぎり、こちらで台詞直しはしません。いろんな考え方を持っている人がドラマを観るから、伝えたいことが伝わらないことも当然あると思っています。でも、僕らは「全員が分からなきゃいけない」と思って作ってはいないんですよね。ただ、伝えたいことが伝わらない分にはいいんだけど、間違って捉えられるのは避けたい。違うふうに捉えられる可能性があるものに関しては、それはやめようという話はいつもしています。 ーー「いろいろな価値観がある」というテーマの描き方は、過去作にも表れているように思います。 村瀬:『silent』で紬(川口春奈)が言った「少ないっているってことだもんね」という台詞があるのですが、僕は、生方さんとドラマを作るうえでこの言葉を大事にしています。『いちばんすきな花』でもテーマにしていたんですけど、みんな先入観や知識で決めつけたがるけど、そうじゃない人もいる。いろんなパターンがあって、いろんな人がいる。「少ないっているってことだもんね」ということを常に意識しながら、生方さんの脚本を受け止め、世に送り出しています。