相模原事件受け日本障害者協議会の藤井代表が会見(全文1)事件の概要と見解
この事件に関する3つの見解
藤井:第2次世界大戦の開戦日から1941年の8月まで繰り広げられた、ヒトラーの命令によるT4作戦は価値なき生命の抹殺の容認作戦とも言われ、ドイツ国内で20万人以上の障害者が虐殺されました。犠牲者の多くは知的障害者と精神障害者でした。ここでの価値とは働く能力でした。T4作戦以前には遺伝病子孫予防法に基づいて、約40万人もの障害者と病気のもとが断種を強行されました。T4作戦のあとにはそこで培われた殺害方法や装置が、あのユダヤ人大虐殺に引き継がれました。ドイツでは2010年の11月、この段階でドイツ精神医学精神療法神経学会ですね。DGPPN。この総括を契機にして、ドイツでこのT4問題について向き合いつつあります。 私は昨年来、ドイツに三たび、3回、足を運び、人権や障害という視点からこのT4問題について光を当て続けてきています。光を当ててる矢先にこの、今回の事件が起きました。問題は容疑者がなぜこうした考え方に至ったのかであります。繰り返してはいけないT4作戦でしたが、こうした形で日本で表面化したことは実に驚きであり、戦慄であります。まだまだ闇の部分の多い今度の事件ですが、ぜひ真相究明を全面的に進める必要があろうかと思います。 見解の2つ目は市民の常識、いわゆる普通の感覚でこの事件を捉えてみたいと思います。普通の感覚から事件の舞台となった施設の実態、そして事件後の対処方法を見るといくつも違和感があります。1つは舞台となった場が、入所施設という特殊な場であったことです。集団でかつ長期にわたる生活形態は、障害のない青年層、あるいは壮年層にはあり得ないと思います。大量の、今回の殺人が大規模な生活形態と関係があったかどうか。これも検証の対象です。問われるのはここを利用している家族ではありません。施設から地域へ、このことを加速できないでいる障害者政策、あるいは行政にあろうかと思います。ちなみに厚労省の発表によりますと最新データで、日本には知的障害者が74万1000人、このうち施設に入ってる者が11万9000人となっています。 見解の3つ目は昨今の日本社会の特徴、そして昨今の障害者施策との関係についてです。 すいません、見解の2つ目のうち、ごめんなさい、まだ続けてます。違和感があった、普通の感覚と見て違和感がある2つ目は、死亡者、死んだ方の氏名が伏せられてることです。この国では事故やあるいは事件で死亡した場合には、氏名を公表するのが常であります。故人の氏名や故人の情報、これによって手の合わせ方が変わると思います。今のままでは、グループの死、顔のない死、これでは1人1人を悼むことはできにくいと思います。 3つ目の違和感は、難を逃れた障害を持った人たちの、その後の暮らし方であります。報道によりますと、約90人がやまゆり園の体育館で生活をしているといわれています。一般的に考えて凄惨、かつ自分たちの仲間が死んだ現場で、同じ敷地内に2週間以上も生活というのはありうるでしょうか。 見解の3つ目は今の日本社会の特徴、そして今の障害者政策との関係についてです。むろん事件とこれらを単純に結び付けることはできません。しかし日本の社会で起こったことは間違いのない事件であり、舞台となった日本社会の現状を触れないわけにはいきません。現代の社会を端的に言うと市場万能主義、あるいは競争原理が幅を利かせると言っていいと思います。こうした風潮が今回の事件に関係がいささかでもあるのではなかろうかという懸念を持たざるを得ません。 市場原理をベースとする政策は規制緩和、あるいは自己責任論という形で障害分野にも影を落としています。こうした流れと関係しながら福祉労働者、この支援者ですね、の労働条件は極めて劣悪に抑えられています。こうした中で障害者を支える現場で何が起こっているのかですが、1つには専門性の劣化が進んでいます。また公募をしても職員が集まらないという慢性的な職員不足や、あるいは正規職員がいないことからくる余裕のなさによって職場の人間関係が希薄になっています。 ※全文2へ続く