不凍液連続殺人事件「まるで悪夢を見ているようだった」…4人を毒殺した”浅草のボンボン息子”の叔父が語る「魔」の半年間
「勇は植物人間のまま死んでいった」
己の私利私欲を満たすために、子供のみならず姉や両親にまで手をかけた細谷夫妻。今回の逮捕により、2018年には半年間だけで3人の親族が犠牲になったことになる。 記者が亡くなった勇さんの兄の自宅を訪ねたところ、開口一番につぶやいたのが冒頭の言葉だった。勇さんの入院の知らせを聞いたのは、亡くなる1年ほど前、2017年にさかのぼる。 「八恵子さんから『お見舞いに来て』と電話があったから病院に行ったの。俺も心配して病室に入ったんだけど、当時の勇は、顔色が悪いとかもなかったし、ぜんぜん話せる感じでピンピンしてたよ。『やることないから暇なんだよ』とか『早く退院できるだろ』とか話してたし、そのときは病院の玄関まで歩いて見送りもしてくれた」 だが、長女から聞いた勇さんの病名は「再生不良性貧血」。骨髄の造血幹細胞が障害を受けることで、赤血球や白血球のほか、血小板が正常に生成されなくなる国指定難病だ。勇さん自身も、転院するにつれて徐々に衰弱していった。 「入院してから3ヵ月も経つと、体もどんどん痩せ細って言葉を話すのも遅くなっていった。それで3回くらい転院したころには、寝たきりになって言葉の意味も理解できなくなったの。目の前で『俺が兄貴だよ!』と呼びかけても、ただボーッと虚ろな目をしてるだけ。 最後に見舞いをしたときには、酸素マスクをつけて応答もないし、『これはちょっと時間の問題だな』と涙が出そうになった。それから面会謝絶になって、勇は植物人間のまま死んでいったんだ」 2018年6月、勇さんは73歳という若さでこの世を去った。さらに半年前の1月には、その妻・八恵子さんも亡くなっている。勇さんの兄の妻は、生前の八恵子さんについてこう語る。 「八恵ちゃんは天真爛漫な人でね。私も色んな舞台とかに誘われて一緒に行くほどの仲良しだったけど、彼女はずっと糖尿病を患っていて人工透析を受けてたんですよ。だから長女から『お母さん(八恵子さん)が入院した』って聞いたときは『病気が悪化したのかな?』なんて思ってたの。 案の定、お見舞いにいったら『糖尿病が悪化したの』と話してたし、亡くなった知らせを聞いたときにも、それが原因なのかと思ってたんだけどね…」