<日中韓首脳会談実施は焦りの証拠?>5年ぶりに会談が実現した意味と、中国を本気にするために必要なこと
中国が前向きではなかった理由
中国との関係は日韓両国にとって大変に重要だ。特に地続きの韓国にとって、中国とある程度良好な関係を築くことは、北朝鮮対応という視点だけでなく、韓国自身の安全と繁栄にとって非常に重要である。日本にとっても、中国との競争と共存を維持することは、隣国は変えられないという地政学の現実から考えても、最重要の外交目的である。 そういう観点から、約5年振りに日中韓首脳会談を実現したことの意義は、この解説記事が言うように、「ルールに基づく地域秩序」にとっては大きい。 しかし、今回の日中韓首脳会談が実現したのは、言い換えれば、これまで開催に積極的でなかった中国が開催に応じたのは、日韓関係の改善、日米韓関係の緊密化によるところが大きいのではないだろうか。これは、中国と渡り合うためには、自らの立場を強くすることが一番大事だと言うことを如実に示している。 そもそも、なぜこれまで中国は日中韓サミットの開催に前向きでは無かったのか。それは、米国と話していれば、米国の同盟国でありその行動がある程度予測できる日韓と話す必要は無いという中国なりの割り切りがあったからだろう。 しかし、国際社会の環境は中国にとって厳しくなっている。日米同盟、米韓同盟は益々強化され、楔を容易に打ち込めると思っていた日韓関係も改善し、日米韓協力は新時代に入った。さらには、台湾を取り囲むように、日米比3カ国の安全保障協力も強化され、今年のリムパックには、再度多くの欧州諸国も参加する。 ワシントンで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会談では、通常は北大西洋の問題に焦点が当たるが、太平洋国家でもある米国は、意識的に太平洋側の情勢にも焦点を当てようとするだろう。岸田文雄首相を含むAP4(NATOアジア太平洋パートナー)の首脳も再び出席する。
そして、7月に三中全会を控える中で、中国経済の減速は益々明らかになりつつあり、輸出ドライブによる国内総生産(GDP)押し上げの試みは、習近平主席自ら働きかけた欧州を含め、各国の反発を招いている。ロシアとの関係は対欧州、対グローバルサウスとの関係で中国の人気に傷を付け、そのロシアは北朝鮮にまで手を出そうとしている。 そんな中で、中国としては、日米韓協力緊密化の中で実質的成果は限られることを承知の上で、日中韓での連携を模索せざるを得なかったのだろう。