セルフプレジャーはどんなときにする?女性が安心して話せるコミュニティでわかった「赤裸々な性事情」
女性向けセルフプレジャーアイテムやデリケートゾーン用ケアアイテムを展開している「iroha」。公式アンバサダーである「iroha部」は今年3期目を迎え、10名の定員に対して100名以上の応募があったとのことです。iroha部立ち上げの経緯や、活動内容、「安心して性の話をできる場があることの意味」など、広報担当の西野芙美さんと、iroha部の立ち上げを行った月島ののさんにお話を伺いました。 <写真>セルフプレジャーはどんなときにする?女性が安心して話せるコミュニティでわかった「赤裸々な性事情」 ■一般ユーザーの口コミがほとんどなかったiroha 月島さんは以前は別の会社で働きながら、個人でセルフプレジャーアイテムに関する発信活動をSNSで行っていました。irohaについても11年前のローンチのときから知っていて、「いつかTENGA社で働いてみたい」と思っていたとのことです。 個人で活動する中で、性に関心の強い女性への偏見を感じることも多かったという月島さん。友人として仲良くしていた男性から性的な目で見られていたり、セルフプレジャーに興味があるというだけで「エロい人」と扱われたりするなど、嫌な経験もしたとのことです。 「私以外にも同様の経験をしている女性はいると思い、安心して性について話せる場が必要だと考え、女性だけで性について話すイベントを始めました。イベント自体は延べ100人くらいの参加者がいて、イベントのファンも定着してきたところでコロナ禍に入り、開催が難しくなりました。その頃、ちょうどirohaのプロモーション企画の求人が出ていたので、応募したのが入社までの経緯です」(月島さん) 入社後、最初はirohaのSNSや新商品プロモーション周りの担当を行っていました。当時、SNSでirohaについて発信している人はかなり少なく、「一般のお客様が参考にできるような口コミがSNS上にありませんでした」と振り返ります。 「私自身、アダルトグッズの製造元や販売元が信頼できる会社がどこなのかもよくわからず、SNSでバズっていたものを買うことが多かったのですが、実際に買ってみたら、固くて微妙だったり、すぐ壊れてしまったり、サイズ感が合わなかったりした経験がありました。 コスメを買うときに、SNSでレビューを調べて納得してから買うという流れがあります。公式アンバサダーによって、定期的にSNS上に口コミが掲載されたら、irohaでも実現できるのではと考え、入社から1年後の頃に、iroha部の提案をしました」(月島さん) ■セルフプレジャーの目的や得られる満足感も人それぞれ iroha部の活動は1期につき、8か月間ほどの期間で行います。メインの活動は、毎月送られてくるirohaアイテムについて、SNSにレビューを載せること。任期中、5回ほどファンミーティングを開催し、毎回色々なテーマについて、社員を交えて、話し合ったり発表したりもしています。「iro iro iroha」というメディアの記事制作や、iroha取り扱い店舗に訪問し、そのレポートをSNSで公開するという活動もあります。 1期生は公式オンラインストアのセットに付属するノベルティポーチを作るワークを行ったり、2期生はセルフプレジャーに関するワークショップや、推しのirohaについてのプレゼン大会も行いました。 セルフプレジャーマップとは、どんな場面でセルフプレジャーをしたくなって、どんな感情になって、どんな満足感を得るのか、いくつか選択肢が書かれている紙にペンで丸をつけながら、自分のことを話すことで、人それぞれ違うことが見えてくるワークです。 「元々は社内で『セルフプレジャーってどういう気持ちになって、どんなメリットがあるんだっけ?』ということを話して書きだしている中で、感情も、得られることも、色々あることに気づいたんです」と話す西野さん。 「『女性らしさ』を保つため、性欲解消のため、寝つきをよくするためなど、人それぞれセルフプレジャーの楽しみ方があり、得たこともリラックスや興奮など異なります。セルフプレジャーはいやらしい部分だけ切り取られがちですが、ワークショップによって、セルフプレジャーの価値や目的に広がりがあることが可視化されたと思います」(月島さん) iroha部では毎回10人が募集されますが、1期生、2期生も90名以上の応募があるという大人気。今年募集を行った3期生は100名以上の応募があったとのことです。 「メンバーには22歳から50代の方まで、幅広くいらっしゃいます。バックグランドは様々で、元々個人で発信活動をしている方もいれば、普段は会社員の方も。SNS上で交流し、その後お仕事に繋がったり、飲み友達になったりと、期を超えてiroha部メンバー同士でコミュニケーションを取っている様子もよく見られました。 irohaの感想をどこまで話せるかのラインは、人によって違うことも感じました。『これを使ってオーガズムを得られた』といったように具体的に話せる人もいれば、アイテムのデザイン的な話をされる方もいらっしゃって、どちらも必要なレビューだと思います」(月島さん) 「性に関する価値観は人それぞれですが、『irohaが好き』という芯は共通しているので、スムーズに交流している様子がうかがえました」(西野さん) ■女性が安心して性の話をできる場の大切さ 女性が抱える性の悩みというと、生理や婦人科系の病気、身体の色々なこと、セックス、パートナーとの関係性、セルフプレジャーと幅広いですが、普段話せるのは、「避妊に失敗したかも」「避妊してもらえなかった」などヘビーな悩みの傾向が多い。 月島さんはiroha部を通じて「女性が安心して性の話ができる環境の大切さに気づきました」と話します。 「iroha部のみなさんも、色々な悩みやコンプレックスを抱えていたものの、周囲の人とは話す機会がなかったとお話ししていました。iroha部の活動では、自分自身の経験や考えを共有する機会が多く、『自分と向き合うきっかけになった』『今後も女性の性について発信していきたい』という意見をいただきました」(月島さん) テレビでも「セルフプレジャー」という言葉が取り上げられることも出てきたり、Xでトレンド入りすることもあり、かつSNS上の反応を見ていると、否定的な反応よりは、性別問わず「こういう切り口もあるんだ」という受け取り方が増えている。そのため、月島さん自身は、女性が性に関して発信することへの世間の偏見は少しずつ減ってきていると感じているとのことです。 今年3月には、ルミネ北千住でのirohaポップアップストアの販促の一つとして、「iroha女子会」という企画を実施しました。女性5~6人で性のことやセルフプレジャーのことを話した後に、店舗でお買い物をするという企画で、好評だったため、その後、福岡や大阪でも実施しています。 最後に、iroha部卒業生のコメントを一部ご紹介します。 最初は、ただの商品紹介をするための集まりだと思っていました。頼まれた品を良いようにプレゼンすることが任務で、それ以上でも以下でもないというか…。けれど、ここまで書いてきたように様々な経験をして、iroha部での活動は自分を見つめるきっかけをもらえる場にもなり得るんだな、と今では思っています。アイテムを通して・他の部員の経験談を通して、自分はどうだったっけ?と矢印を己に向け直す作業ができる。まさに、セルフプレジャーの一環ですね。(橘みつさん) 一番印象に残っているのは、ファンミーティングです。性に関することを人と話すこと自体がほとんどなく、しかもirohaが好きな人ばかりの集まりでお話しするというのもすごいことでした。いろいろなことを教えていただいて勉強にも刺激にもなりましたし、性のことを通して自分自身を見つめなおすきっかけにもなりました。今までは性欲が強いことに悩んだり、もやもやしたりすることがあったのですが、この自分でいいんだ、大丈夫なんだと自分のことを初めて受け入れられるようになりました。先日のミーティングでも出ていましたが、iroha部のすべてを受け入れてくれるあたたかな雰囲気がやさしくて、その中でいろいろな考えに触れることができたのがすごい体験でした。(takakoさん) ※後編ではiroha部2期生として活動していた、みるさんにお話を伺いました。 取材・文/雪代すみれ
雪代すみれ