『ノルウェイの森』は単なるあけすけな恋愛小説じゃない…自死で親しい友を失った「ピストジャム」が聞いた作者・村上春樹の“自問する声”とは(レビュー)
ピストジャムが聞いた「自問する作者の声」
直子は「忘れないで」と言ったが、正直忘れるわけがない。残された人間は一生忘れへん。直子が恐れた深い井戸の底になんか誰も行ったりせえへん。 ワタナベは、「記憶がずっと鮮明だったころ」は「全てがあまりにもくっきりとしすぎていて、どこから手をつければいいのかがわからなかった」と語る。 絵の具の色を全部混ぜると黒になる。さまざまな思いが去来し、真っ黒になった心。その心は、いったい何色と何色と何色が混ざり合ってそうなったのか。説明するには、どうしても時間がかかる。 僕には、物語の最後の一文が「これを書いたことで、はたして俺は救われたんか? 正しかったんか?」と、自問する作者の声に聞こえた。 [レビュアー]ピストジャム(芸人) 1978年9月10日生まれ。京都府木津川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学卒業後、こがけんを誘って吉本興業の養成所へ入所(東京NSC7期生)。2002年4月にデビューし、「マスターピース」「ワンドロップ」など、いくつかのコンビを経て、ピン芸人となる。アイドルのラジオ番組 MC などでも活躍。下北沢カレーアンバサダー。かまぼこ板アート芸人。2022年『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』(新潮社)を発売。 協力:吉本興業 第一芸人文芸部 Book Bang編集部 新潮社
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