「本当にあった」に学ぶ、トレッキングの撤退ラインとは? がけ崩れの「熊野古道登山」
3000カ所を超える斜面崩壊が起きた紀伊山地
熊野古道を紹介するガイドブックの取材だったり、道普請のボランティア活動の体験取材だったり、熊野地方のいろいろな場所へ行って、いろんな現場を見たのですが、がけ崩れと言っても千差万別、いろいろな状態がありました。 人工林で皆伐を行うと、表土が崩れやすくなったり植樹されている樹が倒れてしまうこともあるようです。 倒木が大きいと、完全に登山道をふさいでしまうこともあり、そういう現場では道迷いが頻発すると聞きました。 川から一段高いところにあった道が部分的に崩壊して、川床に降りないと通れないような場面もありました。
がけ崩れの現場ではどうすればいいのか
一度崩れた斜面は不安定なので、どうしても通らなければいけないときは、なるべくがけから離れたところを歩くようにしましょう。降雨中や降雨後は、さらに崩れることもあるので、とくに注意が必要です。危険な箇所には、迂回コースが設定されていることもあります。 当然ですが、このような場合は迂回の指示通りに進みます。通行止めになっている箇所は、おそらく専門家が確認して、安全が確認できない場合だからです。 通行止めにはなってはいないけれど、不安定で危険な崩壊地を越えなければいけないような場合もあります。下の写真は、北アルプスの一般登山道です。 このような場所を通過するには、いくつか注意点があります。 1) 落ち着いて、ローインパクトを心がけた丁寧な足運びで、すみやかに通過すること。 ※手前でよくルートを観察して、危険ゾーンで立ち止まらないようにしましょう。また、さらなる崩れを誘発しないよう丁寧に歩きます。 2) 複数名で通るときは、最も危険な場所を通過するのは一人ずつ。 ※万が一、崩壊や落石が起きたとき、メンバーがかたまっていると被害が大きくなるからです。危険なゾーンの手前で待機し、通過中の人をしっかり見守ってください。 3) 常に上方からの落石に注意を払う。降雨中や降雨後はとくに注意深く。 降雨量が多いと、地盤がゆるんだり、落石が起きたりする可能性が高まるので、避けた方がよいでしょう。どうしても通過しなければならない場合は、できればヘルメットを着用するといいと思います。 崩壊地のみならず、急な斜面の下や谷地形の場所では、落石の可能性には常に備えて注意を怠らず、すみやかに通過しましょう。休憩などは安全な場所を選ぶようにしてください。 ここ数年、雨の降り方が以前とは変わってきています。これまで以上に、がけ崩れや土砂災害には注意が必要になってくると思います。油断することなく、しっかりと状況を確認し、安全に山歩きを楽しみましょう。
根岸真理