ケーブルテレビがインフラとして担う責務を能登半島地震で痛感。光ファイバー化の重要性も明らか
■人口減少や高齢化により地域が抱える課題解決へ 一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟は6月14日、第52回定時総会を開催した。開会のあいさつを行った今林顯一理事長は冒頭、1月1日に発生した能登半島地震について、現地に足を運び、「見ると聞くとでは大違い。言葉を失いました」と語り、「復旧・復興には相当の時間を要するように感じます。日本は地震大国であり、災害が多い。能登の復旧・復興を自分事として考えなければならないのではないでしょうか」と呼び掛けた。 【画像】一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟が第52回定時総会を開催 災害時の避難について、「避難先での水や食料などの生活物資やそれを確保するための道路が不可欠。そして非難を呼び掛け、生活物資やインフラの状況、復旧の見通しなどを伝える情報は命と生活を守るカギとなるものです」と指摘。「ケーブルテレビが担う責務が非常に大きいことを改めて痛感しました。連盟としてもこの経験を踏まえ、災害時における事業者の対応などをまとめ、次に生かせるよう集約・共有していきたい」とケーブルテレビが果たす役割を強く受け止めた。 また、日本ケーブルテレビ連盟では一昨年、ケーブルテレビ業界が地域とともに成長し、さらなる発展を遂げるため、2030年に向けて業界が担うべきミッション、目指すべき姿、アクションプランを「2030ケーブルビジョン」として策定し、公表している。 今林理事長は「これを経営に活かしていただくのは、それぞれの事業者の皆様方。日々の経営上の課題を解決するためのアプローチ、協力・連携の方法論、こういったヒントがビジョンには多数ございます。ローカル5G、IoT、ケーブルIDなどを利活用した地域DXの具体的な取り組みは、環境が疲弊する中で地域の皆様に新たな付加価値をお届けすることを可能とします。皆様のビジネスを揺るぎないものにしてくれることでしょう」とビジョンの意義とその実践を訴えた。 さらに、災害復興・対応もその取り組みのひとつだとして、日常のサービスが、緊急時には避難や避難生活、復旧・復興に役立つサービスでなければならないとの考えを示した。「ケーブルテレビは人と人、ビジネスとビジネスを繋ぐプラットフォームの役割を果たします。人口減少・高齢化によって自治体が消滅するとも言われる地方において、私どもが課題解決をお手伝いし、役割を果たせる場面があります」。 次の時代へ向け、「さらに人と地域の役に立つケーブルテレビ業界であるために、皆様のお知恵をいただきながら、会員事業者にとって役に立つ連盟であるよう取り組んで参りたい。意欲を持ってチャレンジされる会員様のお手伝いをして参ります」と力を込めた。 ■ケーブルテレビの重要性を説明してもし過ぎることはない 続いて登壇した総務省 情報流通行政局長・小笠原陽一氏は、今回の能登地震を教訓に、「これから皆様に何をお願いし、われわれとして皆様と一緒に何をやっていかなければいけないか。ある程度手掛かりのようなものが得られました」と語り、次のように説明した。 「今回の能登地震で奇しくも明らかとなったのは、(ケーブルテレビが)石川県全体では半分以下の普及率なのですが、能登北部地域(2市2町)については、90%を超える依存率となっているところもありました。これが地震による電柱の倒壊、停電によって、ほとんどのご家庭が放送で情報を入手する手段を失いました。依存度が高い地域であったからこそ、ケーブルテレビの重要性や存在が極めてクロースアップされました」。 ケーブルテレビの世帯普及率は全国で約52.5%と過半数に及ぶ。例えば東京都では78.3%、大阪府では87.1%になる(総務省「ケーブルテレビの現状」令和5年11月版)。能登地域は地形的な特殊性から地上波が届きにくく、ケーブルテレビへの依存度が高い地域のひとつとなっている。 併せて、光ファイバー化の重要性も明らかとなったと続ける。「能登地域で現地の写真を関係者の皆様にお見せしていくなかで、非常に認識が広がりました。アナログの場合、電柱ごとにアンプを設置するため、アンプへの電源供給が止まることは、放送が止まることを意味します。それに比べれば、光ファイバーははるかに強靭です」。 地域によりケーブルテレビへのインフラ依存率が大変高い地域が少なくないことを踏まえ、「ケーブルテレビによる放送やインターネットが視聴者の方々に深く浸透し、ひとたびこれが失われた時の影響がいかに大きなものか。その説明がまだまだ十分ではありません。インフラとして浸透しているケーブルテレビの重要性を説明してもし過ぎることはありません」と力を込めた。 能登半島地震により改めて浮き彫りになった地域に密着したケーブルテレビが担う役割やその光ファイバー化の重要性について、「あらゆる機会を捉え、皆様と一緒に訴えて参ります」と訴えた。
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純