《ブラジル》日本酒輸出額が過去最高に 更なる市場拡大へ期待高まる
近年はスーパーやレストランなどでも取り扱われるようになり、ブラジルでも広く親しまれるようになった「日本酒」。日本では若者の酒離れなどで消費量が落ちているが、海外への輸出量は順調に伸びている。中でもブラジルは今後、さらに需要が高まると見られており、日本酒業関係者からは注目が集まっている。
日本酒造組合中央会によれば、昨年のブラジルへの日本酒輸出額は、過去最高額の約1億8857万円(前年度比5・8%増)を記録した。輸出数量は前年度比4・3%減の約32・9万リットルだが、1リットルあたりの単価は574円(同10・6%増)と上昇し、高額商品の需要が高まっていることが分かる。 世界的に見ても、日本酒の輸出量は年々増加傾向にある。2021年の輸出数量は3万2053キロリットル(前年比47・3%増)、金額は約401億円(同66・4%増)と、12年連続で最高額を更新。背景には海外での和食ブームがある。 一方で、日本国内の消費は冷え込みが続く。国内出荷量は1973年の170万キロリットルをピークに減少傾向で、2020年には42万キロリットルまで落ち込んだ。 酒蔵「楯の川酒造」が22年に行なった調査では、20~30代の若年層の70%が1年以内に日本酒を飲んでいないことが判明。「今まで一度も飲んだことがない」という回答も若年層・女性ともに40パーセントを超え、日本酒への関心の低さが業界の課題となり、この傾向が続くと国内消費はすぼまる一方だ。 これらを受け、海外展開に力を入れる酒蔵は多い。ブラジルは約2億1500万人の人口を誇り、中南米最大の経済規模を持つ。さらに近年の経済成長に伴い、中産階級が増加。日本酒のメイン購買層の月収7600レアル(約23万円)から2万3800レ(約73万円)の人口は約17%と大きい。
ブラジルに「尾瀬の雪どけ」などを輸出している群馬県館林市の酒蔵「龍神酒造」は2009年から7度ブラジルを訪問。同酒蔵杜氏の堀越秀樹さんによれば、同酒蔵から外国への輸出量は日本食ブームの影響で圧倒的な輸入量を誇るアメリカを筆頭に台湾、フランス、韓国となっているという。堀越さんは、ブラジルへの輸出量は他国に比べると少ないものの、ここ数年、日本酒市場の拡大は続いており、「成長性を感じています」と期待を語る。 ブラジルで日本食品の輸入販売を行うヤマト商事の本田総一郎社長は「ブラジルの日本食市場は拡大を続けていますが、日本酒は関税によって値段が高く、認知度もまだまだ十分ではありません。日本酒をより一層普及させるためには、これらの問題を乗り越え、さらにその先を見据えて、ポルトガル語で日本酒を魅力的に説明できる人材を育成し、日本酒に接する機会自体の増加に取り組む必要があります」と話す。 同社では日本酒販売に携わる営業員全員に日本の一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションが認定する「Sake Expart」の資格を取得させ、日本食イベントへの参加や自社レストランでの商品展開を通じて、ブラジルの人々の日本酒との接点が増えるように取り組んでいるという。 2024年のミシュランでは、ブラジル内で21店が星を獲得し、その内、9店が和食レストランだった。 本田社長は「日本では2500年以上に渡って『米』が主食でした。その米に合うように発展してきたのが和食で、米から作られている日本酒が和食に合わない訳がない。和食の広まりとともに、今後は日本酒もより求められるようになると思います」と語った。