パリで開いた新境地 逆転の北口、逃げ切り金―陸上・クローズアップ
「逆転の北口」が大一番で新境地を開いた。 パリ五輪の陸上女子やり投げ決勝。北口榛花(26)=JAL=は1投目に65メートル80をマークし、逃げ切りで金メダルに輝いた。 1投目は慎重に入り、その後は技術的なトライも交えながら修正を重ね、6投目で記録を伸ばすのが北口の必勝パターン。昨年は世界選手権の逆転優勝も、2度の日本記録更新も6投目だった。 チェコメディアによると、セケラック・コーチは同時進行のトラック種目の状況でやり投げがたびたび中断されて集中しにくくなると考え、1投目に勝負を懸けて66、67メートルを投げるよう助言した。「いつもの6投目ぐらい集中した」と北口。1投目としては自己最高の記録を出し、引き締まった表情で拳を握った。 3投目以降は毎回、投げる瞬間に「右のふくらはぎの内側がぴくっとなった」という想定外のアクシデントもあり、記録を伸ばせなかったが、ライバルに抜かれることもなかった。コーチの戦略は大当たりだった。 今季は思うような投てきができず、4位に終わった五輪前最後の実戦後に発熱。最終調整は「プレッシャーを感じる余裕すらないぐらいドタバタ」。そんな状況でも、決勝前夜から自身が67メートル超を投げた動画を見返し、速くなっていた助走のテンポを修正。海外転戦で培ってきた地力、適応能力をいかんなく発揮した。 「名言が残せなかった」が「2024ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに選ばれた北口だが、金メダル獲得直後にこんな言葉を残していた。「65メートルではまだ満足できない。また頑張る理由ができてほっとした」。アジア記録(67メートル98)の更新、その先の70メートルの大台へ。五輪女王の挑戦は終わらない。