2対2で指すペア将棋 藤井七冠も思わず苦笑、実力者でも苦戦をしいられることも
注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年11月25日号より。 【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん * * * 将棋は一局を1人対1人で指すのが基本だ。しかし2人対2人で指すのも面白い。この形式をペア将棋、あるいはリレー将棋という。 11月10日。東京都港区において「企業対抗ペアマッチ」のトーナメントがおこなわれた。女流棋士と企業代表のアマ強豪がペアを組んで、1人1手ずつ指していく。決勝戦に勝ち上がったのは小髙佐季子女流初段&木村孝太郎さん(リコー)と磯谷祐維女流初段&谷口慶至さん(エコ・プラン)のペア。両組ともに、強い2人の息が合っていた。最後は小髙・木村ペアが熱戦を制して、優勝を飾った。 この方式で重要なのは、互いの信頼感だろう。仲間が指した手を見て舌打ちをしたり、がっかりした仕草を見せたりするのは、よくない。 「ペアが指したら、まずは『うんうん』とうなずくこと」 ある高段の棋士はそんなコツを語っていた。 実力者が組んでも思わぬ苦戦をしいられることもある。 昨年12月開催の「SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2023」では藤井聡太八冠(当時)&豊島将之九段(西軍)と羽生善治九段&渡辺明九段(東軍)によるリレー将棋がおこなわれた。1人が5手ずつ指して交代する方式だ。このとき、豊島九段は振り飛車の作戦を採用した。居飛車党で、公式戦では振り飛車を一度も指したことがない藤井八冠は思わず苦笑。さすがの藤井八冠もとまどうところもあったか。結果は対振り飛車にめっぽう強い羽生九段・渡辺九段ペアの勝ちとなった。 お隣の囲碁界では、さかんに「ペア碁」が打たれている。いずれ将棋界でももっと多く見られるようになるかもしれない。藤井現七冠が組む相手が、振り飛車党の福間香奈女流五冠や西山朋佳女流三冠だったとき、どんな作戦になるのか、想像してみるのも楽しそうだ。(ライター・松本博文) ※AERA 2024年11月25日号
松本博文