【金崎夢生の今|後編】J3昇格を目ざすヴェルスパ大分の原動力に。「結果を出すことが自分に課せられた役割」
かつての小笠原や曽ケ端、本山のように
自らの意見を堂々と言うタイプの男は、様々な環境で壁にぶつかってきた。「扱いにくい選手」「言うことを聞かない選手」という穿った見方をされることも少なくなかった。それでも本人は「とにかく本気で勝てる集団を作りたい」「チームとして一丸となって戦いたい」という一心でここまでやってきた。無所属になっても、海外再挑戦を考えなかったのも「個人の成功よりもチームの成功が一番の喜び」だという信念があるからだ。 その思いを山橋監督や福満らチームメイトたちも受け止め、より大きな結束が生まれていけば、彼らは前向きな集団になっていくはず。金崎にはかつて鹿島でともに戦った小笠原満男のような存在になってほしいものである。 「鹿島にいた頃の自分は、満男さんやソガさん(曽ケ端準)、モトさん(本山雅志)のような先輩たちが舵を取ってくれたんで、安心感を持って自由に伸び伸びとプレーできた。『俺は何もやっていない。お前の好きなようにやっていればいい』とよく声をかけてもらいましたね。 ヴェルスパでも多くの選手たちと良い関係性を築きながらやっていきたい。僕も年長者なんで、自分からよく声をかけていますけど、お互いの良さを引き出し合うためにもコミュニケーションはやっぱり大切だと思います」 山橋監督もそういう金崎の姿勢をポジティブに捉えている。「彼は本当にチームのために、ということをよく考えて、周りの選手にアドバイスしてくれている。今のチームは大人しい選手が多いので、彼のような発信力のある選手は有難いですね」とも語っていて、信頼関係も強固になりつつあるようだ。 金崎はV大分を長期的な視点で良くしたいと考えている。J3昇格はその一歩。さらに前向きな方向に進むためにも、上のカテゴリーに上がることは必要不可欠なのである。 「ここで何年プレーするか分かりませんけど、結果を出すことが自分に課せられた役割ですね。40歳まで現役を続けて、その後はクラブを持ちたいという希望があります。僕は指導者は向いていないので、そういう方向でずっとサッカーに携わって行くのかな...。いずれにしても、今は目の前の一つひとつの試合で全力を注いでいきます」 本気で新たなチャレンジをスタートさせた金崎は、果たしていつスタメンに名を連ねるのか。栃木との上位対決までにはトップコンディションに引き上げておきたいところ。鋭い得点感覚をピッチで示し、ゴールを量産する彼の姿を心待ちにしたいものである。 取材・文●元川悦子(フリーライター)