キャリアベストのシーズンを過ごした才木浩人…“向上心の塊”は猛虎を再び頂点に導くべく進化に挑む
◆ 「狙っていても打たれない直球」へのこだわり 下克上への道を切り開くことはできなかった。 12日のクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージ第1戦に先発したタイガースの才木浩人は、5回7安打1失点で降板。初回、一死満塁の窮地を無失点で切り抜けるなど粘りの投球を見せたものの先制点を奪われたチームは最後まで流れをつかむことができず初戦を落とした。 「今日は最初から飛ばしていこうと思ったので。(ポストシーズンで)ちょっと違った空気感みたいなのはありましたけど、その中で最少失点で切り抜けられたのは良かったですね」 大事なマウンドを託された右腕に悔しさや落胆は、あまり感じられなかった。もしかすると、言葉には出さず内に秘めていたのかもしれない。 5回87球での降板はレギュラーシーズンなら不完全燃焼だろう。ただ、しびれる短期決戦のマウンドで持てる力はすべて出し切ったーー。後悔のない力投。試合後の取材からはそう感じた。 今季は開幕からローテーションの一角を担っていずれもキャリア最高の13勝、防御率1.83、137奪三振をマーク。今季限りで退任する岡田彰布監督は、シーズン終盤に4連勝と救世主となった高橋遥人も選択肢にある中、才木にポストシーズンの初陣を託した。 「ピンチでも1本打たれなかった。今日に関してはまっすぐ(直球)が良かったんで。まっすぐはどんどん飛ばしていきながらって感じですね」 黒星にもどこか納得しているように見えたのはこの「まっすぐ」にあったのかもしれない。才木のプロでのキャリアは、自身の生命線である直球を追い求めることとイコールでつながる。カットボールやツーシームなどゴロで打ち取って球数を減らす近年のトレンドには興味を示さず「狙っていても打たれない直球」にずっとこだわって進化に挑んできた。 だから、シーズン終盤も「来年につながるものを」と常々口にしてきた。実際、このCS初戦のマウンドも踏み出す左足など下半身の連動性を微修正した新フォームで登板。 「フォームの中で修正するならこの辺かなというのは目星を付けていた。シーズンも終わってCS前ですけど時間もあったので“ちょっとやってみるか”と思って」と意図を明かしている。 チームは翌日の2戦目も連敗で2年連続での日本シリーズ進出の夢はついえて終戦。向上心の塊のような25歳は、この敗戦も糧にして来季さらに大きくなって甲子園に帰ってくるはず。 「足りないことだらけの1年だった」 猛虎を再び頂点に導くべく、背番号35は歩みを止めない。 文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)
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