【nurié インタビュー】楽曲のイメージに関して色で会話することが多い
大阪を拠点としながら活動を重ねているnurié。ビジュアル系シーンの中で存在感を高めつつある彼らが、シングル「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」をリリースする。収録されている3曲についてメンバーたちに語ってもらった。 nurié インタビューその他の写真
アートと熱量の両方を大事にしたい
──今作はどのようなシングルにしたいと思っていましたか? 大角:前回のミニアルバム(2023年4月発表の『瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで』)は表現したいことが幅広かったので、今回は本来のnuriéを表現したかったというか。初期の自分たちを投影させようというのがありました。 廣瀬:自分たちの本質、原点に立ち返った感じですね。 ──nuriéの本質というのは? 大角:表現の自由さがありつつ、社会を含めたさまざまなものに対する尖った姿勢があるというか。もともと普段から抱く疑問を表現するバンドだったんです。アートと熱量の両方を大事にしたいというのがあるので、そこを今回改めてやりたかったんです。 染谷:大角の表現には泥臭い一面もあって、そこは他のビジュアル系のバンドにはなかなかないところなのかなと思います。 大角:ビジュアル系をやっているからには、視覚的アートと聴覚的なアートの両方をちゃんと表現したいというのもあります。僕は絵も描くのでグラフィックも大事にしたいんです。バンド名の由来もそこにあります。子供の遊び心のようなものを持ちつつ、そういうものを表現したいと。 ──ビジュアル系という表現スタイルに関してはどのようにとらえていますか? 大角:メイクをするのは表現をするにあたってのツールです。でも、その辺を履き違えている人もいる気がしていて。言い方は悪いですけど、ホストっぽいメイクだったりとか、軽々しい使い方は違うのかなと。僕たちはそういうことではなく、ちゃんと表現を大事にしたいんです。 廣瀬:ビジュアル系は、どうしても先入観を持たれがちなんでしょうね。でも、実際に蓋を開けてみたらいろんなバンドがいるんです。だから、もっと幅広い人たちに広まればいいなと思っています。 染谷:ちゃらいイメージはどうしてもあると思います。なので、まずはそういうのを拭っていきたいです。 大角:僕らみたいな世代がビジュアル系を外に広めていかないといけないと思っています。そもそも視覚的な部分でも表現しているバンドは、どれもビジュアル系だと言ってもいい気がするんですよね。 ──CDのジャケット、バンドロゴとかも視覚表現ですし、そこに何のこだわりもないミュージシャンはあまりいないでしょうからね、 大角:そうなんですよ。だから、“ビジュアル系をバカにする人はSoundCloudに曲を投稿するだけにしておけよ!”と思います(笑)。音楽の世界観に合わせてメイク、衣装とかを追求できるのがビジュアル系の強みですし、僕らもリリース毎にそういうテーマを追求しています。曲の世界を徹底的に作り上げられるのがビジュアル系なので。 ──まさに今回のシングルはそういう作品ですね。タイトル曲の「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」は夏を舞台にした曲ですが、この時期にリリースすることになった理由は何だったんでしょうか? 大角:夏を舞台にしつつも冷たい空気感が重要な楽曲なので、あえて冬に出すことにしたんです。 ──冷えきってしまいそうなふたりの愛を、ともに再び温めようとしている姿が伝わってきます。 大角:物語を表現するために音の空気感、温度感にもこだわりました。音楽だけでなく、蝉の声や雑踏の音を入れてみたりしながら、情景が浮かぶものを作り上げました。 廣瀬:ちゃんとアートな部分の大角が出ている曲です。“冷たいひんやりした感じ”っていうのをギターを弾く上でも大事にしました。アルペジオのニュアンスも大事でしたね。 ──細かい話ですが、ギターはフェンダージャズマスターを使っているんですか? 廣瀬:そうです。よくご存じで。 ──こういう音楽性のバンドでジャズマスターは珍しいと思ったんです。 廣瀬:そうかもしれないですね。こういうバンドだとゴリッとした音が出せるギターを使うことが多いですし、僕も昔はレスポールを使っていたんです。でも、このバンドで表現したいことに合っていなくて。シングルコイルのジャキジャキ鳴るギターにしたくてジャズマスターを弾くようになりました。ストラトキャスターもシングルコイルですけど、あのギターの音だと細すぎるんです。nuriéにはいろんなタイプの楽曲があるので、ジャズマスターが合っていました。 ──この辺りを掘り下げるとマニアックになりすぎるので、このくらいにしておきましょう(笑)。 廣瀬:はい(笑)。 大角:話を聞きながら笑いを堪えるのが大変でした(笑)。 ──(笑)。曲の話に戻りましょう。染谷さんは「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」をどのようにとらえていますか? 染谷:いい意味でタイトルや歌詞から受ける印象と音の印象に違和感がある曲ですけど、考えすぎずに聴くとめちゃくちゃ素直に入ってくると思います。聴けば聴くほどいろんな味わいが出てくるんじゃないでしょうか。ドラムに関しては季節が移り変わっていく感じとか、めまぐるしく構成が変わっていくニュアンスを意識しました。サビのメロディアスさをちゃんと際立たせることも考えましたね。 ──楽器の音色やニュアンスについてはいろいろ話し合いました? 廣瀬:そうですね。さっき少し話したギターのアルペジオも“冷たさを大事にしたい”って言われていたので、“まぁ、そうでしょうね”と思いつつ(笑)。最初に提示したものが硬すぎて“もうちょっと柔らかく”と言われたので、そういう部分を調整していきました。“冷たさの中さに温かみも出ている”みたいなニュアンスなのかなと。こういうのを突き詰める作業は僕も好きです。 染谷:ドラムの音色に関してはテックさんにも入っていただいて、冷たさが残る感じを目指したというか。言葉にするのは難しいですけど、そういうようなニュアンスを目指して作っていきました。 ──3人でじっくりニュアンスを共有しながら色を乗せていく共同塗り絵ができたということでしょうか? 大角:まさにそうですね。自分たちは楽曲のイメージに関して色で会話することが多いんですよ。デモを持ってきた時に“これはこういう色だから、そういう歌詞を乗せてほしい”とか。色を提示されるとイメージが浮かぶんです。色はnuriéの活動の中で大きな要素ですね。