元DAY6のeaJが語るK-POP界から世界的スターへの転身、初来日への想い
eaJプロジェクトの挑戦、「不眠症」というテーマ
―2020年にバンド活動と並行してスタートしたeaJプロジェクトですが、多彩なジャンルに挑戦しているのが印象的です。しかしながら、どの曲も1、2分と短いのはなぜなのでしょうか? eaJ:理由はシンプルで、長い曲をプロデュースする余裕がなかったから。資金がなかったんだ。それで仲のいい友だちにボランティアみたいな感じで参加してもらった。みんな「友達価格」でやってくれたんだ。でもヴァースをふたつ以上作るほどのお金は払えなかった。 ―いろいろなスタイルを少しずつ試して自分の音楽性に何を取り込むか、何が自分らしいスタイルなのかを見極めるつもりでああいう形にしたのだと思っていました。 eaJ:それもまた真実ではあるね。あのプロジェクトでリリースしたのは10曲前後あったと思うけど、すべて内容が違う。これらの作品を通して自分は何が大好きなのかを見極めようとしていたのは間違いない。ただ、お金の問題の方が大きかったんだ。 ―そして2022年4月に初のソロシングル「Car Crash」をリリースしました。この曲はeaJプロジェクトのリリカルで内省的なサウンドやDAY6のハードロック路線、そのどちらにも似ていないサウンドでした。以前よりも開放感が強く感じられましたが、やはり当時の気持ちを反映しているからなのでしょうか? eaJ:あの曲が生まれた背景について正直に言うと、2022年に88risingのCEOを務めるショーン・ミヤシロから「ソロアーティストとして、ロサンゼルスで開催するHead In The Clouds Festivalに出てほしい」と連絡があったんだ。その時点で僕は8曲くらいしかリリースしていなかった。ところがショーンがセッティングしてくれたのは、午後6時、夕暮れ時のメインステージ。だから「みんなが飛び跳ねられる曲を作ろう」と考えたんだよね。それで書いたのが「Car Crash」だったんだ。 ―この時も、外部からのアプローチがきっかけだったのですね。 eaJ:そうなんだよ。考えてみると、多くのことが何かに反応したことから始まっている気がするんだ。すべてのものごとに深い意味付けをするアーティストは多いけれど、僕の場合は人生に訪れる波にとりあえず乗ってみる感じかな? それでもいい感じにきているよ。 ―やってくる流れに柔軟に対応できるのは非常にいいことだと思います。そうした過程の中でできた曲で聴く側も開放感を味わえる、とても素晴らしいですね。 eaJ:そう言ってくれてありがたいよ。JYPの練習生時代に経験したことが実を結んでいると思う。あそこで受けたレッスンの多くが今すごく役に立っているんだ。JYPで養った洞察力がなければ、こんなにたくさんの曲を書くことは絶対にできなかったよ。 ―振り返ってみると、オーディション番組への参加もDAY6時代も現在のスタイルを作り上げる過程で必要な経験だったのではないでしょうか? eaJ:そう! 最近、自分の今のキャリアについてよく考えるんだ。歳も重ねて31歳になって、もう少しで(今年9月で)32歳になる。いつも歳より若く見られるのが嫌だったけど……。ほら、アメリカ人ってよく「アジア人は若く見える」って言うよね(笑)。 ―ああ、確かにそうですね。 eaJ:そうだよね。僕は神的な存在を信じていて、それは自分が耳にしたことのある特定の何か(の宗教)ではないんだけど……で、すべてが今この瞬間に繋がっていて、神が伏線をくれていたような気がしているんだ。「eaJとしてキャリアを全うしなさい」みたいなね。奇妙な考えかもしれないし、僕がただそうだといいなと思っているだけかもしれないけど……。でも、そう願っているよ。 ―これまでにソロで出したEPは『laughing in insomnia』『smiling in insomnia』『medicated insomnia』の3枚。いずれもinsomnia(不眠症)をテーマにしていますが、この意味について教えていただけますか? eaJ:僕はひどい不眠症でね。薬を飲むようになるまでは本当にひどかったんだ。今は薬を飲んでいるからかなり良くなったけど、それまでの27、8年間は全然眠れなかった。頭が冴えっぱなしでさ。面白いのは、曲がひらめくのが眠れない夜、あるいはシャワーを浴びている時が多いんだ。僕の音楽的なアイデアの多くは不眠がベースになっていると思うよ。 ―曲はあなたが日中にしていたことを反映したものなのでしょうか? それとも眠りたいという願望とか……。 eaJ:僕は眠れないでベッドに横になっているときに、過去の自分がやった些細なことを思い出してくよくよするタイプなんだ。5年前のことを急に思い出して「うわああああ」なんてなったりする。「何であんなことを」とバツが悪くなってしまったりしてね。あのEP3枚は、僕が頭の中やベッドの中で考えたことのコレクションだと思う。 ―曲を作ることによってカタルシスを覚えたりしますか。不眠症を題材にした曲を作ることによって自分自身が自由になる時もあるのでしょうか? eaJ:少しはそういう効果があったと思うね。でも新しいEPが出たらもっともっと開放感を味わえると思うんだ。だからすごくワクワクしているよ。