広島「原爆の日」、入場規制された記念式典会場内外の光景 「弾圧許すな!」周辺騒然
ウクライナ侵攻やガザへの攻撃が続き核戦争へのリスクが高まる中で迎えた79回目の「原爆の日」。平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)が行なわれた広島市中区の平和記念公園では、原爆投下時刻の8月6日午前8時15分から1分間の黙祷の最中に聞こえる鐘の音と蝉時雨は例年と変わらなかったが、公園の周辺は物々しい空気に包まれた。
公園では今回、入場規制区域が、従来の公園南側(式典会場)から北側の原爆ドームや原爆の子の像がある一帯まで拡大され、機動隊も出動する厳戒態勢が敷かれた。これを「反戦運動への弾圧だ」と捉えた市民グループなどが前夜から原爆ドーム前に座り込み、抗議活動を続けた。 「参列する市民たちの安全を最優先に考え、市議会の議論を通じて市民のさまざまな意見を踏まえた措置」だとして広島市が入場規制拡大の方針を打ち出したのは今年5月16日。式典開催前後の時間帯(午前5時から9時まで)は式典会場につながる6カ所の公園入場口で手荷物検査を実施(一部には金属探知機も設置)し、拡声器やプラカード、横断幕などの持ち込みを禁止するというものだった。 原爆ドーム周辺では例年この日にさまざまな団体による慰霊祭や「ダイ・イン」などの活動・集会が行なわれてきた。一方で「静かな8月6日を願う広島市民の会」などの声もあり「平和記念式典を厳粛に開くことを求める請願」が今年2月27日、広島市議会で採択された。その翌日には1年前の式典当日にドーム前の集会に参加していた5人が暴力行為等処罰法違反の容疑で逮捕された。参列者の誘導をしていた市職員に体当たりして転倒させたというものだが、発生約半年後の逮捕と共に行なわれた家宅捜索は中核派の活動拠点とされる前進社(東京都江戸川区)や同社の中国支社(広島市南区)など8都府県の14カ所に及んだ。規制拡大に際して市が「安全対策」を強調する背景にはこうした一連の動きがあるとみられる。