センバツ甲子園 長崎日大、延長惜敗 攻守随所で持ち味発揮 /長崎
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第2日の20日、県勢の長崎日大は第2試合で近江(滋賀)と対戦し、延長十三回の激闘の末、2―6で逆転負けを喫した。29年ぶりのセンバツ勝利には届かなかったが、随所で攻守に持ち味を発揮した長崎日大ナインに、スタンドからは惜しみない拍手が送られた。【浅野翔太郎、辻本知大、田中綾乃】 生徒や保護者ら約1300人が詰めかけ、ピンク一色に染まった一塁側アルプススタンドが一番の盛り上がりを見せたのは、両チーム無得点で迎えた六回の攻撃時だった。 2死二塁で、4番の主将・河村がジャストミートした打球は前進守備を敷いていた左翼手の頭を越え先制。続く白川も右越え適時二塁打を放ち加点した。「よっしゃー、このままいけー」。保護者会会長の白石大介さん(52)は声を張り上げ、河村の父誠司さん(65)は「4番の仕事をしてくれた」と喜んだ。 投げては先発の種村が好投。直球は最速130キロ前後ながら緩いカーブを効果的に織り交ぜ、コーナーを突く持ち前の制球力で凡打の山を築いた。「淡々と投げられる性格。高さを間違えなければいける」という父正さん(51)の言葉通り、八回まで危なげない投球を見せた。 だが九回、主軸に2安打を浴びて1点差に迫られ無念の降板。種村は「抑えれば勝ちという気持ちになって制球が乱れた」と悔やんだ。直後のピンチは、左翼手の平尾が左飛でタッチアップした三塁走者を好返球で刺して同点を阻止。続くピンチで、2番手・川副は後続を「あとワンストライク」まで追い込んだが、変化球を右前に運ばれて同点に追いつかれた。 延長の最大の好機は十回。敵失と四死球で1死満塁としたが、プロ注目の好右腕・山田の気迫に後続が押されて凡退し、サヨナラの好機を逃した。 川副は延長も力投を見せたが、タイブレークに突入した十三回、山田に適時打を浴び、自身の暴投も絡んで4失点し力尽きた。川副は「低めに投げようと意識したら球が引っかかってしまった。自分の実力が全然発揮できなかった」と肩を落とした。 当初の対戦相手は京都国際だったため、好左腕の森下を想定して打撃練習してきた長崎日大ナイン。開幕直前に急きょ相手が近江に変わったが、強力打線は健在で、強豪相手に互角以上の戦いを見せた。 九回に好返球を見せた平尾は「全然いい打撃ができていなかったので守備で貢献したかった」と振り返り、「人生の中で一番悔しい試合になった。一日一日の練習を死ぬ気で頑張っていきたい」と前を向いた。適時打を放った白川は「勝てる試合だった」と悔しさをにじませ、「負けたままでは終われないので、絶対甲子園に帰ってきたい」と夏を見据えた。 ◇女性団長塩川さん、演舞でエール送る ○…長崎日大の応援団長、塩川望さん(2年)はコロナ禍で声を出した応援ができない中、振り付けが大きくなるよう意識した演舞で選手にエールを送った=写真。応援団員12人の中で塩川さんは唯一の専属部員。入学時の部活動紹介で当時の団長、花木由布子さん(18)の演舞を見て「女性でも団長になれるんだ」と憧れて入部を決意した。初の甲子園で不安も大きかったが「野球部の皆さんを見ていると自分も元気をもらえた。こんなに感動する試合は初めてです」。 〔長崎版〕