LE SSERAFIM、USチャートとMTV VMAの反響が示す、豊かな表現力と等身大の目線
韓国のガールグループ・LE SSERAFIMが6カ月ぶりにカムバックした。今回リリースした4th Mini Album『CRAZY』にはEDM調のハウスミュージック「CRAZY」をリード曲に、コーチェラで初披露され話題になった「1-800-hot-n-fun」も収録されている。半年間という準備期間を経て披露された今作。3週間の活動期間は、MTV VMAでの受賞やアメリカの人気トーク番組でのパフォーマンスなど、グローバルな人気獲得を強く意識したものだった。 【写真】4th Mini Album『CRAZY』コンセプトフォト ・USチャートから見る、LE SSERAFIMのグローバル戦略 Billboardが発表した最新チャート(9月21日付)によると、今作のタイトル曲「CRAZY」は、メインソングチャート「Hot 100」88位で、2週連続チャートインした。88位と聞くと大したことないとお思いの方も多いかもしれないが、今年「Hot 100」に2週連続チャートインしたK-POPガールグループはLE SSERAFIMが唯一で、さらにK-POPの歴史上「Hot 100」に2週連続チャートインを果たしたグループはLE SSERAFIMを含め5組だけだ。 また、記憶に新しいのがMTV VMAでの「PUSH Performance of the Year」の受賞。式中のプレショー(Pre-Show)では「1-800-hot-n-fun」と、プレショーのフィナーレに「CRAZY」を披露し、デビューしてまだ2年という短さにも関わらず大きなステージを経験してきた彼女たちの堂々としたステージは世界中で話題となった。「1-800-hot-n-fun」でLE SSERAFIMが登場するシーンで観客たちの視線を集めたのはやはりメンバーたちの姿勢だろう。天性のスターだと思わされるような内から溢れる自信やカリスマ性、コロコロ変わる表情には筆者も釘付けになった。 数々の現場を乗り越えた彼女たちは、もちろん全員“パフォーマンス最強グループ”としての自信とプライドを持っていることだろう。とは言え、ドキュメンタリー(YouTubeのHYBE LABELS公式チャンネルLE SSERAFIM Documentary ’Make It Look Easy’ )を見ても分かる通り、ステージ上で強い姿を見せる彼女たちが弱気になることがあるのも確かだ。そんな中、メンバーたちはお互いを鼓舞し、エネルギー溢れるパフォーマンス力で観客を虜にしていく。それに加えて、観客の様子を見ながらステージを盛り上げる姿勢もLE SSERAFIMの大きな要素となっているように思う。豊かな歌唱力に加え周りを見ながら立ち回るフレキシブルさが非常に高い。彼女たちのステージングのバランスの良さは、“完璧さ”よりもその場のヴァイブスを大事にするアメリカの舞台で大きく発揮されているのではないだろうか。 ・LE SSERAFIMのREMIX戦略 パフォーマンスだけではない。彼女たちは音源でも大きく他のK-POPアイドルと異なった戦略を持っている。それがREMIX戦略だ。「Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife」をリリースした際にもUPSAHLやRina Sawayama、Dami Lovatoなどをフィーチャリングに迎えるなど、徐々にグローバルな音楽リスナーへの働きかけをしていたが、「EASY」や「Smart」ではREMIXを数曲集めたREMIXアルバムもリリースしている。REMIXではTikTokで人気の高いSpeed Up verやPlugnbを取り入れながらも、Boiler Roomを中心にグローバルな人気が高まっているダンスミュージックのジャンルも積極的に採用。本来のK-POPアイドルファンの多い若年層から幅広い音楽リスナーまで、非常に様々なリスナー層へのアプローチに抜かりがないのだ。そして今回の「CRAZY」。これでもかというほどREMIXがリリースされている。“Party Remixes 1”と称されたタイトル通りかなり踊れるREMIXアルバムについで、インターネットを中心にティーンの人気が高いPinkPantheressや、グローバルに知名度の高いDavid Guettaを迎えたREMIXがミニアルバムリリースから立て続けに発表され、彼女たちの活動期間は常に話題にあふれていた。LE SSERAFIMがデビュー当時から大きくファン層を膨らませている要因は、こうした地道な活動によるものだと感じさせる。 ・LE SSERAFIMのこれからは グローバルな人気を獲得してきたK-POPアイドルグループはBLACKPINKやBTSなどが挙げられるものの、LE SSERAFIMはこれらのグループに比べてもより急進的に、より目に見えて分かる計画的なグローバル戦略を練っているように見える。それはこれまでの活動歴と経験してきたステージの大きさからも感じとることができる。一方で、FEARLESS(=恐れ知らず)と掲げていても彼女たちだって人間で、傷ついたり自信を無くしてしまうこともあるはずだ。常に新しいサウンドやコンセプトに挑戦するLE SSERAFIMを応援するとともに、さらに大きなステージに立つ彼女たちの姿を楽しみにしている。
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