7000人診察してわかった、職場をブチ壊す人が「考えていること」
根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。 【写真】知ったら全員驚愕…職場をダメにする人の「ヤバい実態」 〈私がメンタルヘルスの相談に乗っている食品メーカーで、50代の男性社員が30代の男性社員の胸ぐらをつかみ、「ふざけるな。俺の話をちゃんと聞いとけ」と怒鳴った。その部署の上司が驚いて、こんな騒ぎになった事情を双方それぞれに尋ねたところ、この騒動には、別の50代の男性社員、Aさんがからんでいたことが判明した。Aさんが、胸ぐらをつかんだ男性に、30代の男性社員が愚痴をこぼしていたのを聞いたと告げ口したのだ。〉(『職場を腐らせる人たち』より) 〈従業員が十人程度の町工場に勤務する50代の男性はうつ病で休職中なのだが、「最近また調子が悪くなった」と診察時に訴えた。「どうしたのですか」と尋ねると、勤務先の50代の社長が他の従業員の前でこの男性の噂話をし、「あいつがうつになったのは家族が原因」と言って、次々に降りかかった災難についてべらべらしゃべったと、仲のいい同僚から電話で聞いたという。〉(『職場を腐らせる人たち』より) どんな会社にも「不和の種をまく人」や「他人の秘密を平気でばらす人」は存在する。 こうした人は何を考えているのだろうか。 〈社長にせよ、40代の医師にせよ、自分が他人の秘密をばらせば、暴露された本人がどれほどつらい思いをするかということに想像力が働かないように見える。うつ病で休職中の従業員の場合、職場の同僚に秘密を知られたことによって病状がさらに悪化するかもしれないし、復職に恐怖を覚えるかもしれない。妻が自殺した医師の場合も、大切な家族を失った喪失体験による苦悩に加えて、その事実を面白おかしく言いふらされたことによる苦悩も味わったのだから、彼のつらさは察するに余りある。 にもかかわらず、二人とも相手の悲しみや苦しみを想像してみようともせず、むしろその身に降りかかった不幸を笑い物にしている。もしかしたら、他人が苦しんでいるのを見ても同情も憐憫の情も覚えず、それどころか逆に快感を覚えるサディズム的心性の持ち主なのかもしれない。 こういうタイプは、他人の秘密を平気でばらす。しかも、暴露された本人が隠しておきたいと思っていたことほど言いふらす傾向があるように見受けられる。そのせいで本人が苦しみ悩む姿を見ても、罪悪感など微塵も覚えず、陰でほくそ笑む。当然、秘密を暴露することを恥ずかしいとも思わず、反省もせず、面白半分で繰り返す。まさに他人の不幸を蜜として味わう典型といえよう。〉(『職場を腐らせる人たち』より) 想像力が足りず、事実無根の噂でも平気で流すような人もいる。 『職場を腐らせる人たち』では、こうした人がいる組織では、多くが知らず知らずのうちに「イネイブラー(enabler)」になっていると分析している。 〈「イネイブラー」とは、依存症患者の周囲にいて、薬物やアルコールを購入するお金を与えたり、不始末の尻ぬぐいをしたりする人物を差す。結果的に悪癖を容認し、場合によっては助長してしまうことが少なくない。 この会社の社員の多くも、お局社員が流した根も葉もない噂を信じ、さらに拡散したという点では、彼女の悪癖を容認し、助長する「イネイブラー」になっている。その根底には、他人の不幸や不祥事が面白おかしく語られると、それに快感を覚えるという人間の残酷な一面が潜んでいるのではないか。〉(『職場を腐らせる人たち』より) つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
現代新書編集部