住友生命がこの1年半で激変、今後の保険ビジネスを占う「3つのポイント」とは?
これまでの連載では日本生命や第一生命の中期経営計画(中計)をみてきたが、今回は住友生命が2023年3月に発表した中計に注目する。同社ではウェルビーイング領域の拡大を全面に押し出した上で、2018年7月に発売した健康増進型保険「Vitality」を筆頭に中計を展開している点がポイントだ。ウェルビーイングを巡るエコシステムをどのように拡充していくのか? 矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 山口 泰裕氏が最新の動向に触れながら解説する。 【詳細な図や写真】「スミセイ中期経営計画2025」 の取組み(出典:住友生命「スミセイ中期経営計画 2025」)
ウェルビーイング領域の拡大を全面に「住友生命の中計」
住友生命は2023年3月に中期経営計画(2023-2025)を発表、具体的に4つの戦略軸──「ウェルビーイングデザインへの進化」「WaaS(Well-being as a Service、住友生命が提供する関連サービスの総称)」や「ミニ保険などの新規領域でのイノベーションの実現」「収益構造改革」「グループ戦略」を打ち出している。 中身をみると、日本生命や第一生命のそれとは大分様相が異なっていることが分かる。 まず大手2社は営業面での強化に具体的に言及しているのに対して、住友生命はウェルビーイングやVitalityを前面に押し出しており、営業面での記載は営業職員(ウェルビーイングデザイナー)の育成や販売強化、接点の拡大などに留めている。経営重要目標(KGI)からは、同社が2018年7月に発売した健康増進型保険「Vitality」のエコシステムの強化を含めた成果の創出に対し、優先順位が高いものと想定される。 同社はKGIの1つとして今回、「ウェルビーイング価値提供顧客数」(グループ/住友生命単体)および住友生命の同顧客数に含まれる「Vitality会員数」について実績および見込み数値、2025年中期経営計画数値、2030年の目標数値を公開している。この推移からも、重きを置く様子がうかがえる。「ウェルビーイング価値提供顧客数」は以下の目標を含んだものをさす。 具体的には、住友生命グループにおけるウェルビーイング価値提供顧客数およびVitality会員数について急速な成長を見込んでいる。 これを達成するための具体的な施策の記載は計画上、触れていないものの、その中には後述するように体制強化も含まれている。 では実際にどのようにこの目標を達成するのか?「商品・サービス面での強化」「体制面」「デジタルに関する取り組み」などのポイントを中心に解説しよう。