「ひどい町」トランプ氏が“致命的”失言 スイング・ステートのウィスコンシン州で再び敗北の可能性も
前回選挙では僅差…バイデン氏が「勝者総取り」
一方、選挙をめぐる問題だが、前回2020年の大統領選挙でトランプ前大統領はウィスコンシン州で僅差で敗れ、「不正があった」と訴えたが同州最高裁に却下された。「ひどい町」発言にはこの遺恨もあったと思われるが、逆にそれは2024年の選挙に影響することになったのかもしれない。 この時の得票はバイデン大統領163万866票、トランプ前大統領161万184票で、その差は2万682票、率にして0.7ポイントの違いにすぎなかった(ポリティコ・2021年1月7日)。しかし米大統領戦独特の「勝者総取り」の仕組みで、ウィスコンシン州に割り当てられている選挙人10人はバイデン大統領が獲得することになり、同大統領の当選に大きく貢献することになった。 そのウィスコンシン州最大の都市ミルウォーキー市が、2024年の大統領選挙で共和党の候補者を決める党大会の会場に選ばれたのは言うまでも無い。共和党が同州で勝利して選挙人10人を奪回することを狙ったからに他ならない。党大会でこの町が共和党一色に染まれば、前回失った2万票余りを奪い返すことは容易に計算できる。 しかしその思惑も、この党大会の主役になるはずの前大統領の「ひどい町」発言で危うくなった。民主党がそのチャンスを見逃すわけがない。
ウィスコンシン州で再び敗北の可能性も
民主党全国委員会(DNC)は、トランプ前大統領の写真と「ひどい町」発言を大きく記した巨大なビルボード(屋外広告)を10基制作し、ミルウォーキー市の幹線道路I-94やI-41、I-43の道路脇に展示する作戦に出た。 「ドナルド・トランプのミルウォーキー発言の失敗は、大統領選を犠牲にするかもしれない」 米誌ニューズウィーク電子版は14日こう報じた。 記事は、米国近代史を研究する英国ノッティンガム大学のクリストファー・フェルプス教授の考察を次のように紹介する。 「大統領選挙は、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州のような州(スイング・ステート=選挙のたびに勝利政党が変動する激戦州)の行方に絞られてゆくと考えられるが、その際に、多くの住民が故郷と呼ぶ町を非難するのは決して良い考えとは言えない」 トランプ前大統領が「ひどい町」発言でウィスコンシン州を落とすと、大統領選の結果を危うくすることにもなりかねないというのだが、果たして? 【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】 【表紙デザイン:さいとうひさし】
木村太郎