センバツ2023 1回戦 34年ぶり北陸、粘り及ばず /富山
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は18日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕し、開会式では30年ぶり2回目の出場の氷見(富山)、34年ぶり2回目の出場の北陸(福井)、3年連続10回目の出場の敦賀気比(同)の北信越勢3校が18~20番目に入場行進した。全出場校参加の開会式は3年ぶりで、3校の選手たちは力強く甲子園の土と芝を踏みしめた。第2試合では北陸が2年連続20回目の出場となる高知と対戦し、1―4で逆転負けした。福井勢として4年ぶりの勝利とはならなかったが、春夏各1回の全国制覇を誇る伝統校を相手に最後まで粘りを見せた選手たちには一塁側アルプス席から大きな拍手が送られた。【来住哲司、矢倉健次】 北陸は攻守とも素晴らしいスタートを切った。エース右腕・友広陸が一回を3者凡退で切り抜けると、その裏に打線が鮮やかな先制劇。四死球などで2死一、二塁の好機を作り、5番・平田海智が右前適時打を放った。平田の父智之さん(45)は「大舞台でタイムリーヒットを打って、夢を見ているような感じだ。練習試合では調子が良くなかったので心配だったが、うまく(投球に)逆らわずに打った」と感無量の表情だった。 だが、二回の守りでは友広が安打と四球などで2死一、二塁のピンチを招くと、決め球のスライダーが高めに浮いて逆転の左越え2点適時三塁打を浴びてしまう。本人は「味方が1点を取ってくれて、行くぞと思ったが、気持ちだけが入ってしまった」と力みがあった様子。友広の父義昭さん(57)は「私を甲子園に連れて来てくれ、夢をかなえてくれて、できた息子。ただ、今日は球に伸びがない感じだ」と心配そうに見守った。 その後は互いに譲らず、五回まで1点差の競り合いに野球部保護者会の山根伸幸会長(56)は「どっちに転ぶか分からない展開。次の回を守り切れば、こちらに流れが来ると思う」と期待したが、六回の守りで1失点。七回から救援の右腕・川上将大も八回に1点を失い、3点差をつけられた。 北陸打線は八回に水野伸星と小南亮太の連打などで1死一、二塁、九回にも平田と野路也真斗の安打などで1死一、二塁と好機を作ったが、後続が倒れてゲームセット。それでも、朝倉乗恵校長は「残念だったが、よく頑張った。最後にいい粘りを見せてくれた」と賛辞を惜しまなかった。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇「甲子園は最高!」 北陸・3年 平田海智捕手 見事な技ありの一打だった。一回2死一、二塁の先制機で回ってきた甲子園初打席。1ストライクから外角低めのスライダーを右前に流し打ち、先取点を挙げた。「(体勢を崩さずに)粘っていい結果が出た」と振り返り、大舞台での殊勲打に一塁ベース上で「甲子園は最高!」と感激した。 もっとも、喜びは長く続かなかった。二回にはエース右腕・友広陸がつかまって2失点。その後も失点してリードを広げられて「球が高めに浮き、低めに投げさせるとワンバウンド。うまくリードできなかった」と悔やんだ。 小学生時代は軟式野球で全国大会で8強入りし、中学時代は硬式のボーイズリーグで全国大会出場(新型コロナウイルス禍で大会中止)。「(甲子園常連校の)敦賀気比を倒して全国大会に行きたい」と北陸に進み、主戦捕手としてチームを34年ぶりのセンバツ出場に導いた。 この日は四回に左中間二塁打、九回には遊撃内野安打を放ち、3安打の大活躍。それでも「自分は打ったけど、チームが勝たなくては」と喜べない。「甲子園は楽しかった。また来たい」。さらなる成長を遂げ、再び聖地で躍動するつもりだ。【来住哲司】