地質年代の探求I:聖書より岩石―常識打破で科学者が埋めた生物40億年進化史
ものさし(スケール)としての地質年代表
生物の歴史を探求する際、ものさしとなる地質年代は、非常に重要だ。例えば恐竜はいつ初めて現れ(三畳紀中頃だった)、いつ大繁栄し(ジュラ紀から白亜紀後半の長期間だった)、そして滅んだのか(約6600万年前の白亜紀末だ)。例えば陸上植物。最古の化石記録はシルル紀後期、最初の木はデボン紀後期、熱帯雨林は石炭紀、そして最初の花を持つ植物は、ジュラ紀後期に現れた。裸花植物の適応放散が、多数の草食恐竜の多様性と大型化の引き金になったという仮説さえ、導くことができる。 言うまでもなく地質年代(Time scale)は、実際非常に便利なものだ。このものさし(スケール)としての年代表がなければ、生物進化の大まかな流れや傾向をつかむことは難しい。氷河期や温暖化など地球の太古の環境が、現在と比べどのように変化したのか、このものさしがなければ、比べようもない。 例えて言うなら、大化の改新と明治維新を一緒にして、大きな政治上の変化とまとめるのは、物理的に無理がある。聖徳太子と西郷隆盛が、歴史の教科書の同じページに載っていては、かなりの違和感が生じる。(やはり西郷ドンと顔を並べるのは大久保利通や坂本龍馬でなければ。) そしてもう一つ重要な点がある。歴史的背景を知ることは、そのエッセンス(重要性や意義)を学ぶことでもある。このルールは、サイエンスだけでなく、広く一般に他の分野にいても当てはまる(と私は個人的に考えている)。寿司の歴史を知れば、よりおいしくさまざまなタイプの寿司をほおばることができるのはずだ。細かなテクニックがどのようにして考案されたのかを知ることは、寿司職人の理解をより深め、さらにおいしい寿司を握ることができるはずだ。 元ヘビー級のボクシング王者マイク・タイソンは、若い頃、繰り返し過去の名王者のビデオを繰り返し見て、さまざまな技術・秘術・奥義を学んだそうだ。(こうした知識は、例の独特のファイト・スタイルを生み出すことに役立ったはずだ。) さて冒頭に紹介したように、キリスト教圏では旧約聖書の「創世記」の記述における解釈と研究にもとづき、「地球・生物 数千年の歴史」というアイデアが、長年にわたり強く信じられてきた(注:紀元前5529年から3928年の間で諸説あり)。それでは科学者達は、どのようにしてこの根強い「常識」を、打ち破ることができたのだろうか? このくだりは話し出すと長くなる。今回の記事を手はじめに、何人か鍵となる歴史上の地質学者・科学者を今後紹介していきたい。