パウエルFRB議長、雇用市場を支援する用意-インフレ高止まりでも
(ブルームバーグ): 2022年にインフレ率が急上昇した際、米連邦準備制度は金利を引き上げることで賃上げスパイラルを防ごうと動いた。失業率が上昇傾向にある現在、金融当局は雇用減のスパイラルに歯止めをかけるため、しばらくの間インフレが高止まりするとしても金利を引き下げる意向を示している。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は20日の記者会見の冒頭で、現在の景気上昇の中で初めて、失業率が予想外に上昇すれば利下げに踏み切る可能性があると表明した。パウエル議長はその後、記者団の質問に答える中で何度もこのメッセージを繰り返した。
連邦準備制度は利下げに踏み切る前にインフレとの闘いに勝利したことを確認するのを待っているが「労働市場が予想外に弱まれば政策対応が必要になる可能性もある」とパウエル議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に述べた。
パウエル議長は、現在の雇用市場に亀裂は見られないと述べたが、エコノミストの中にはそれほど楽観的でない者もおり、多くの州で失業率が著しく上昇していること、派遣労働者の減少が続いていること、労働時間が短縮されていることを指摘している。
いずれにせよ、パウエル議長ら当局者は一見堅調に見える労働市場が短期間に悪化するし得ることを認識している。歴史的に、失業率はいったん上昇し始めると、企業が他社に追随するように人員削減を発表するため大きく上昇する。
パウエル議長は、労働市場が過度に悪化した場合には金利を引き下げる可能性を示すことで、そのプロセスを回避しようとしているようだ。
ブルッキングス研究所ハミルトン・プロジェクトのディレクターで元FRBエコノミストのウェンディ・エデルバーグ氏は「失業率上昇を勢い付かせたくないということだ」と語った。
インフレ率は当局の目標である2%に「手が届きそうな距離」にあるため、パウエル議長は緩和への扉を開けておくことができると同氏は指摘。当局は物価上昇を抑制するために労働市場に打撃を与える必要はなく、数年間はやや高めのインフレに耐えることを選択できると付け加えた。