父・芝翫、母・三田寛子、“歌舞伎界のホープ”中村橋之助「敷かれたレールを歩く感覚ない」
映画では歌が生み出される背景だけでなく、家族愛も随所に。晋平の母・ぞう(土屋貴子)が東京での晋平を心配する姿や、『カチューシャの唄』の大ヒットに喜ぶ姿はとても温かい。橋之助の母・三田も公開が待ちきれず、先行公開された長野に駆けつけたという。 「“途中から自分の息子が演じてるって思わなかった”と言ってくれて。それがすごくうれしかったですね。ある意味、親孝行できたかな」
人生設計が早くもズレまくり?
昨年は母親とふたりで韓国旅行へ。日帰りで伊勢神宮にも出かけたという。 「'23年に(母方の)祖父が亡くなったとき、母が“15歳で上京して、両親と一緒にいる時間が少なかったから、もっと親孝行してあげたかった”と悔やんでいて。僕もいい大人になったし、365日のたった数日。母親を旅行に連れて行ってもバチは当たらないだろうと思って。こういうことを始めたのは、ごく最近なんですけどね」 父・芝翫の本作への感想を尋ねると、 「年末に映画の舞台挨拶があったので、父を誘ったんです。最初は“行く”って言っていたのに、後になって“映画で主役をさせてもらって、せっかく独り立ちできたのに、そこに自分が行くのはよくない。だから東京で公開したらこっそり行く”と。きっといろいろ考えたんでしょうね(笑)。父が、自分をひとりの役者として認めてくれたこともうれしかったです」 昨年の12月に29歳を迎えている。劇中の晋平は、お見合いで出会った敏子(志田未来)に即プロポーズ。 「僕はその日に会った人と結婚しようとは絶対に思わないです(笑)。お互いのことを知ってから結ばれたくないですか? 結婚願望はもちろんありますよ!」 幼少期には父親と公園で野球をしたり、家族そろってのアクティブなお出かけが多かったと振り返る。 「そうやって育ってきましたし、僕自身、子ども好き。体力があるうちに父のように子どもと一緒に思いっきり遊んであげたいんですよ。僕の人生設計だと25歳には子どもがいるはずだったんですけど……全然狂ってますね(笑)」 今は役者として邁進するときなのだと、前を見据える。 「いちばんの夢は“最強の三兄弟”になること。僕、福之助、歌之助の三兄弟で、それぞれが歌舞伎座の主役を張ることなんです。歌舞伎のために、成駒屋のために。これが僕の生涯の目標ですね。僕自身としては“真ん中が似合う男”になりたい。役者としても、人としても」 歌舞伎と成駒屋の未来は、すこぶる明るい─。 取材・文/花村扶美 『シンペイ~歌こそすべて』 1/10(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開