町内会もDX 回覧板アプリ実験で見えた期待と課題
自治会や町内会といった地縁団体は、行政と住民をつなぐ重要な役割を担っているが、会議、回覧板の準備や回収、イベントの手伝いなど、ただでさえ時間がない現役世代には敬遠されがちで、役員はおのずと高齢化が進むなど課題が多い。そこをデジタル化で改善しようという動きが全国に起きている。愛知県高浜市もそのひとつだ。 回覧板は、町内の重要な情報伝達ツールとして昔から使われてきた。しかし、地縁団体の各班長は、役所から受け取った広報資料を回覧板にはさみ、回覧板を受け取った住民は読んだ後にお隣さんに渡し……と、情報が行きわたるまでに労力と時間がかかる。回覧板をデジタル化できれば、それだけでもかなり楽になるはずだ。 そこで高浜市は、名古屋のITサービス企業バイザーが開発中の回覧板共有アプリ「CHIKUWA!」(チクワッ)を活用した町内会DXに乗り出した。CHIKUWA!には、自治体と地縁団体の役員との連絡、オンラインによる回覧板の配布、各種配付資料の管理、多様化する国籍の住民に向けた多言語対応、災害発生時の緊急情報配信、自治体からのお知らせ一斉配信など、デジタルならではの高度な機能も盛り込まれている。 高浜市ではこれまでに2回、CHIKUWA!による実証実験を行った。第1回のフィードバックを踏まえて改善を施した第2回目の実験の結果、隙間時間に地縁団体の運営業務ができて負担軽減になりそう、ペーパーレスなので若者層の加入も見込めるといった前向きな意見があった一方で、導入の道筋をきちんと考える必要がある、アプリを使えない高齢者をどうするかなど、プライバシーやデジタルデバイドの問題が示された。 導入するにはこれらの問題をクリアしなければならず、慎重に進めなければならない。そこでバイザーは、段階的な導入を提案している。まずは、市の職員と地縁団体役員との連絡に使用する。次に、モデル地縁団体を選んで導入し、効果の検証を行いつつ他の地域の理解を深める。その後に、すべての地縁団体に本格導入するという流れだ。 この実証実験の結果は、高浜市ばかりでなく、全国の地縁団体のDX推進に貢献し、さらにはデジタルデバイド解消のための有用なヒントを提示してくれることだろう。 プレスリリース
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