「先生、見捨てないで!」、1時間の説明後に「メールでください」 医師が疲弊する患者の“無茶ぶり”とは
■先生、見捨てないで! アンケートでは、「外来での待ち時間の苦情が多いです」(一般内科、30代、男性)という声も多数寄せられた。 医師の世界では過重労働が問題視されており、4月から医師の働き方改革が始まった。時間外労働に制約はできたが、患者の数は変わらない。特に大学病院は外来患者が集中しているため、紹介状を持たない患者から特別料金を徴収している。 ある大学病院で、外来患者を診察する医師は、取材にこう話す。 「症状が落ち着いているので、別の病院の外来で診てもらうように言うのですが、『先生、見捨てないで!』と言われました。心配なのはわかりますが、大病院志向は困ります」 頑固で医師の話を聞かない患者もいる。アンケートでもこんな声が寄せられた。 「患者さんがわがままになっている」(神経内科、40代、男性) 「モンスター」(一般内科、40代、男性) 心臓外科医の南淵(なぶち)明宏医師(昭和大学教授、66)は、30代の女性の患者に、1時間かけて説明した後、こう言われた。 「いま説明したことを、文章にして、メールでください」 南淵医師は言う。 「絵も描いてこれだけ説明したのに、今からまた時間をかけるのかと思いました。医師の働き方改革が始まって、病院の診察時間も短くなる傾向にあります。患者さんとしても限りある医療資源をうまく使うために、医師がどれくらいのコスト(時間と労力)をかけているか推し量ってほしいです」 結局、2時間以上の時間をかけて、メールを打った。最後に「他の病院に行かれてください」と書いて結んだ。 「患者さんに自制を促しているわけではありません。お互いのコストを考えて、無理な要求はやめてもらいたいです」(南淵医師) 患者も医師も、互いの状況を理解し、思いやることが肝心だ。(編集部・井上有紀子) ※AERA 2024年6月17日号より抜粋
井上有紀子