PEAVISが語るラッパーとしての矜持 壮絶な過去を歌い、カラフルな多様性を掲げた理由
過去を話し終えた次の動き
―YonYonさんの話が出ましたが、「Dear Lady (Remix)」では韓国のシンガーのoceanfromtheblueさんが参加していますよね。あの人選もYonYonさん発案ですか? PEAVIS:あの曲はEPの『Blooms』で出した時からリミックスを作りたいと思っていたんです。「Dear Lady」は、今まで出会って別れた女性たちへ綴った曲で、その想いをよりエモーショナルに伝えたくて、R&Bを歌えるシンガーの方に頼みたいねってなって「誰にしよう?」ってYonYonと話していたら「この人はどう?」って聴かせてくれて。それでoceanさんに頼みました。一緒にスタジオに入るんじゃなくてデータを送ってもらって作ったんですけど、曲が出てから韓国に行って会いました。 ―YonYonさんとの曲「Colorful」はMVも作っていましたよね。 PEAVIS:「Colorful」は曲のテーマ的にも映像を作りたいと思っていたんです。実写よりもアニメーションの方がカラフルさというか、メッセージを伝えられるのかなと思ってあの形になりました。アニメーターのMarina Takahashiさんとは、自分が参加したHelsinki Lambda ClubとCHAIとの楽曲のMVを通じて知り合い、作風的にもこの楽曲にぴったりだと思い、オファーしました。 ―「カラフル」は今回の作品のキーワードのように感じました。面子的にも、80KIDZやstarRoさんのような方もいれば、地元のアーティストも参加していて、バランスが絶妙ですね。 PEAVIS:NARISKと出した共作アルバム『MELODIC HEAVEN』では福岡のアーティストと一緒に作ったので、今回は地元だけじゃなくて外の人とも絡みたかったんです。色んなジャンルのサウンドをやるのと一緒で、トラックリスト的にも偏りたくなくて。色んな面や意外性を出したかったんです。 普段はトラップをやっているYvngboi Pをブーンバップの「City Lights」に呼んだのも、意外性を出そうと思ってやりました。実はYvngboi Pは元々ずっと近いところにいて、多分ラップを始めた頃くらいから知り合いなんです。10代の頃に自分たちのイベントに出てもらったこともあります。 ―あの起用の仕方は色々な人が衝撃を受けていたと思います。 PEAVIS:ちょっと意外性のあることをやってみたんですけど、良かったですよね。でもブーンバップも一周して新しくなっている気がしませんか? 21サヴェージの新しいアルバムも、サンプリングネタ暖かい系の曲が多かったですよね。 ―ジェイ・Zの『The Blueprint』みたいな曲がありましたよね。一部でトラップのブーンバップ化みたいなことが起きているのかも。 PEAVIS:そうそう。トラップを聴く時の気分も、一昔前にブーンバップを聴く時の気分と同じになってきている気がします。なんかもう、オーセンティックすぎて落ち着くレベル(笑)。 時代の移り変わりも早いですよね。自分もレイジの「Drive in Future」を作っている時はソーフェイゴ(SoFaygo)とか聴いていましたけど、ヒップホップのサブジャンルもたくさんありますよね。 ―「Drive in Future」はそういうことを歌っている曲でもありますよね。この流れで未来の話を聞きたいと思います。今回このアルバムを作ったことで、今後の制作や生き方みたいなものに何か影響はありそうですか? PEAVIS:今まで蓋をしていたってわけじゃないけど、「別に言うことでもないかな」ってことを今回洗いざらい話せたので、気分が今すごく晴れやかでスッキリしているんですよね。「Family」の話にしても、Yvngboi Pとの「City Lights」での過去の話にしても、若い頃には歌えなかったし今だから言えることでした。だから次は逆に過去とかの内省的な話じゃなく、新しくてもっと音楽的な表現をしたいと思っています。 でも年始に大地震が起きたり、暗いニュースがやっぱり多いので。ハッピーな、「人生最高!」みたいな曲ができるかはわかんないです。前向きなメッセージを出したいなという感じはありますね。 ―今後ほかにはどんなことをやっていきたいですか? PEAVIS:福岡にスタジオを作りたいと思っています。自分の制作以外にも、音楽に関わることで色々できたらいいなと思っていて。 福岡は日本の中では大都市とはいえ、やっぱり東京ほどインフラが整っていないと思うんですよね。一発YouTubeでバズったとしても、東京だったらすぐに受け皿があってサポートを得られたりすると思うんですけど、地方だとないわけじゃないけど少ないのかなと。今ってSNS時代で、TuneCoreとか使えばどこにいてもリリースはできるんですけど、やっぱり東京にしかないものがあると思うんです。なので、自分の表現をやりつつ、スタジオを作って新しいアーティストを発掘したい。今後はそういう動きをやりたいですね。
abocado