石神井公園駅前の再開発で、住民の取消請求に“棄却”判決…住民の「行政との合意」はどこまで守られるのか?
高さ制限は都市計画の根幹的なルールの一つ
判決は「建築物の高さの最高限度に係る制限は根幹的都市施設(※)に関するものでなく、同制限の緩和自体は土地所有者の利益になるものである」としている。 ※根幹的都市施設:都市生活に欠かせない基本的な公共施設 つまり、都市計画において、建物の高さ規制は重要性が低いとしている。 これに対し、尾谷弁護士は、法の趣旨と歴史的経緯からすれば、高さ制限は『根幹的都市施設』かどうかにかかわらず重要な事項であり、考慮に入れなければならない事情だと指摘する。 尾谷弁護士:「建物の量的規制については、昭和になってから建築基準法等で基準として『容積率』が用いられてきた。しかし、容積率だけでは量的規制として不十分であることが自覚された。 そこで、平成10年代くらいから、都市としての調和を図る法規制のありかたは、容積率だけでなく絶対的な高さ制限を併用してコントロールしなければならないという考え方に変わってきている。 都市はさまざまな人や事業者からなる集合体で、互いの権利利益の調整が必要になる。そのためのルールが都市計画法、建築基準法、その他の関係法令だといえる。そして、それらの法令において、歴史的経緯を考えれば、高さ制限は確実に根幹的なルールの一つだ。 本件判決は、そのことについての理解があまりに欠けているといわざるを得ない」
本件計画と「景観計画」の整合性
次に、尾谷弁護士は、本件計画と、2011年策定の「景観計画」との「整合性」に関する裁判所の判断についても批判した。 すなわち、景観計画を受けて2012年に地区計画で「石神井公園からの眺望の中で突出しないよう高さを抑える」という基準が定められている。 尾谷弁護士によれば、この基準はもともと、109mと94mの高層マンションが建っている状況で「これ以上石神井公園の景観を破壊してはならない」という趣旨で設けられたものであるという。 ところが、判決は「突出しているか否か」の基準について、「周囲との相対的な関係で決まるものであるから、既存の建築物等との比較において検討することが相当である」とし、既存の2棟の高層マンションと比べて「突出しているとまではいえない」と判示した。 尾谷弁護士:「判決の論理は、2015年に練馬区が景観計画より上位の『マスタープラン』を改定し、そのなかで高い建物を建ててよいという方向性へと方針転換が行われたのだから、『突出している』かどうかは既存の高い建物との関係で相対的に判断すればいいというもの。 区と住民の話し合いによって決められた事項について、区の一方的な方針転換によって覆すことを事実上認めてしまっている」