体重超過ネリへのWBC無期限出場停止処分は“抜け穴”だらけ。米でも賛否
米メディアのESPNは、「WBCの無期限資格停止で、ネリがボクシングをできなくなるというわけでない」と問題点を指摘した。そして、「彼はWBCではランキングから外され、世界や地域のタイトル戦をかけて戦うことはできなくなる。ネリにとって世界戦で2戦続けて問題を起こしたことになる」とも伝えた。 一方、米のボクシング情報サイトのHit Hard Newsは、「この記事を発信する段階では公聴会の日程は発表されていないが、WBCによる決定は、ネリの反プロフェッショナルな行為に対する適切な規則と、法制度を整える上で前向きな一歩となる」と、今回の無期限出場停止を“厳格な処分”として評価した。 米でも体重超過の例が頻発しているため、統一ルールの必要性が論議されており、同サイトは、今回のWBCの厳しい姿勢が、今後、体重超過を防止するためのルール作りへのきっかけになるのではないかという期待をしている。 だが、同サイトは明らかな体重差がありながら強行された運営については疑問を呈した。 「なぜネリが118ポンド(53.5キロ)の体重リミットの計量に失敗し、山中に対して、体重で大いに優位に立っているにもかかわらず試合を実施することを認めたのか。WBCとJBCは、その疑問に答えなければならない」 同サイトは、この試合は中止にすべきだったという意見で、「WBCとJBCの行為は不公平な体重の優位性や、この状況において選手の安全を完全に無視した危険な事例として位置づけられる」と、変則マッチながら試合を承認したWBCとJBCを批判した。 確かに正論。ボクサーの安全性を担保し、ボクサーファーストで考えれば、中止にすべき試合だっただろう。だが、莫大な放映料が発生しているテレビ放映の問題、数千枚に及ぶチケットを売り終えていたという興行の視点から見ると、そう簡単に興行を中止にすることができないという「やむをえない事情」がある。興行保険がかけられている米と違って日本では損害額が桁違いになる。 そういうビジネス面でのリスクを考えると、体重超過が起きないための厳格な抑止策を4団体で統一してルール化することだろう。 プロ失格のネリの暴挙に巻き込まれ、この試合を最後に引退、悲しいラストマッチとなった山中は「ボクシング界全体のルールを団体関係なくしっかりと統一して厳しくしないとファンも納得いかない」とメッセージを残した。ボクシング界は、真摯にその言葉を受け止めなければならない。